〈たたみがみ〉の音便で,衣冠束帯のときに懐中する紙をいう。帖紙とも書く。《枕草子》に〈みちのくに紙の畳紙の細やかなるが〉とあり,最初はあまり厚くない檀紙(だんし)をたたんだものと想像される。のちには〈引きあわせ〉〈杉原〉など,主としてコウゾ系統の厚様(あつよう)が使われたが,ガンピ系統の〈鳥の子〉の例もないではない。武家では〈杉原〉を使うのが故実であるが,直垂(ひたたれ),狩衣(かりぎぬ),大紋などを着るときは必ず色目のあるものを用いたという。1枚ずつ横に二つ,縦に四つに折りたたんでかさねるのが定めで,不時の用のためふところに入れた。歌の詠草などに用いられる場合も多かったであろうが,涙をぬぐい,鼻をかむなど,いまのハンカチーフの用もはたした。鼻紙を目的とする場合には,〈杉原〉20枚を五つに折った。畳紙は各時代を通じて文芸にしばしば出てくる。厚紙に柿渋や漆をぬり,折り目をつけてたたむようにし,いまのハンドバッグと同じ用途のものも〈たとう〉というが,これは後世の転用である。また今日では,白地の和紙で,たたんだ和服を四方からおおい,こよりやひもで結んで収納する形式のものをも指す。
執筆者:寿岳 文章
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
折り畳んで懐中に入れ、歌などを書いたり、鼻紙に用いたりした紙。「たたんがみ」ともいい、平安から江戸時代までの文学作品にもきわめて多くの用例が出てくる。最初は教養のある者のたしなみとして、公家(くげ)社会では檀紙(だんし)(陸奥紙(みちのくがみ))などを愛用したが、武家社会になると杉原紙(すぎはらし)が好まれるなど、時代によって用いられる紙の種類や折り畳み方などに変化がみられる。『日葡(にっぽ)辞書』(1603)にも採録されている。また近代では櫛(くし)などを入れるための、漆(うるし)や渋(しぶ)などを塗った厚紙を折り畳んだものをよぶ場合もある。
[町田誠之]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…たたんで懐に入れる紙の意で,〈ふところがみ〉〈たとうがみ〉また畳紙(じようし),帖紙ともいう。即興の詩や歌,あるいは消息を書いたり,菓子などの包紙やぬぐい紙としても用いられた。…
…帖紙とも書く。《枕草子》に〈みちのくに紙の畳紙の細やかなるが〉とあり,最初はあまり厚くない檀紙(だんし)をたたんだものと想像される。のちには〈引きあわせ〉〈杉原〉など,主としてコウゾ系統の厚様(あつよう)が使われたが,ガンピ系統の〈鳥の子〉の例もないではない。…
…江戸時代には造形遊びの方を折居(おりすえ),折形(おりかた)といった言葉で呼んでいたようである。これが明治のころからは畳紙(たたみがみ),摺紙(たたみがみ),折りもの,折紙細工などとなり,やがて今日の折紙となる。加えて明治の中ごろ,正方形に断裁された何色かの色紙を束ねたものが〈おりがみ〉として売り出されたことから,用紙のことも〈おりがみ〉と呼んでいる。…
※「畳紙」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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