疲労・倦怠感・夏バテ(読み)ひろうけんたいかんなつばて

食の医学館 「疲労・倦怠感・夏バテ」の解説

ひろうけんたいかんなつばて【疲労・倦怠感・夏バテ】

《どんな病気か?》


〈多くは休養・睡眠不足が原因。病気がかくれていることも〉
 連日残業が続く、家事に忙殺(ぼうさつ)される、久しぶりに運動をするなどがきっかけで、疲れや倦怠感(けんたいかん)(体のだるさ)を感じることがあります。また、思いあたる原因がないのに、気力がわかない、体がだるいといった症状が起こることもあります。
 多くは、過労休養・睡眠不足、筋肉疲労、精神的な不安などが誘因となりますが、血圧の異常、心臓病、腎臓病(じんぞうびょう)、肝臓病、糖尿病、うつ病などがかくれていることもあり、十分に休養や睡眠をとっても改善しないときは、医師診察を受けましょう。
 疲労や倦怠感が、暑い季節に起こるのが夏バテです。とくに近年、冷房の普及や気密性の高い建物の増加、地球温暖化などによって温度差のはげしい生活を強いられるため、自律神経に変調が生じて、だるい、食欲がない、眠れないなどの不調を訴える人が多くなっています。
 また、慢性疲労症候群(まんせいひろうしょうこうぐん)といって、日常生活もつらくなるほどの疲労感、集中力・記憶力の低下などが半年以上も続くようなケースがあります。典型的な場合は、発熱、のどの痛みなどのかぜ症状に、頭痛、不眠、意識の低下などをともないます。ウイルス感染説と自己免疫説がありますが、原因はよくわかっていません。

《関連する食品》


〈ビタミンB1カリウムが、筋肉でエネルギーをつくる〉
○栄養成分としての働きから
 疲労や倦怠感が続くときには、食事内容をみなおすこともたいせつです。不足すると疲労をまねく栄養素には、ビタミンB1とカリウムがあります。ビタミンB1はエネルギーの代謝や、筋肉に蓄積された疲労物質の代謝にもかかわっており、カリウムは筋肉を収縮させる働きがあるため、不足すると脱力感が起こります。
 ビタミンB1は豚肉、ウナギダイズなどのほか、麦や胚芽米(はいがまい)にも多く含まれており、麦ご飯、胚芽米を主食にすれば、同時にカリウムをとることができます。
 カリウムはそのほかヒジキなどの海藻、インゲンマメアボカドイモ類などに豊富です。
 また、エネルギーの生成にかかわり、カリウムを細胞中にとりこむ役割をしているアスパラギン酸もとりたい栄養素。アスパラギン酸はアミノ酸の一種で、ダイズなどの豆類、とくに発芽しかけた状態であるモヤシと、アスパラガスなどに多く含まれています。
〈カロテン、ビタミンCなどの抗酸化力で免疫系を強化〉
 慢性疲労には、細胞を活性酸素の害からまもる抗酸化物質であるカロテン、ビタミンC、E、セレンも有効です。活性酸素は、食べものをエネルギーに変換するときなどに発生する不安定な分子で、周囲にある正常な分子から電子を奪って細胞を傷つけます。
 抗酸化物質は、みずからの電子を活性酸素に与えることで正常な細胞への害を防ぎ、免疫系を強化するのです。
 カロテンは、緑黄色野菜に含まれるビタミンですが、なかでもビタミンCとEも豊富に含むカボチャやホウレンソウは、積極的にとりたい野菜です。
 ほかに、ビタミンCはくだものに、Eはナッツ類や青背の魚にも多く含まれます。セレンはワカサギ、イワシ、ホタテなどの魚介類や、ネギ、牛肉などに多く含まれるミネラルです。
〈食物アレルギーが原因の場合は除去食が基本〉
 慢性疲労症候群は原因が不明であるため、治療法も確立していません。いずれにしてもこの病気を改善するには、食事内容をみなおすこと。つまり、栄養素によって免疫系の機能を高めて正常に働くようにし、エネルギーを亢進(こうしん)する以外にないのです。
 慢性疲労症候群の患者さんで食物アレルギーが原因の場合は、アレルゲンとなる食品を避ける除去食にすると、著しい改善がみられることがあります。除去食は、アレルゲンとなる食品を特定したうえで正しく行わないと、栄養不足となり、症状を悪化させる危険性もありますので、医師や栄養士の指導にしたがってください。
 また、イギリスの研究によると、患者さんは血中マグネシウム濃度が正常値よりも低く、マグネシウムを注射したところ、80%の人で症状が緩和したといいます。
 食べたものが代謝されてエネルギーに変換される過程には、多くの酵素が働いていますが、マグネシウムは、その働きを助けるミネラルです。
 この研究の結果から、なんらかの理由で酵素が減ることが慢性疲労の原因になっていて、マグネシウムを投与すると、酵素の機能が改善してエネルギー産出がふえるのではないかと考えられています。
 マグネシウムを含む食品としては、アーモンドなどのナッツ類、カキやカツオなどの魚介類、ヒジキやアオノリなどの海藻類、ダイズやアズキなどの豆類、野菜類などがあります。しかし、食べる量を考えた場合には、主食として胚芽米(はいがまい)や全粒紛(ぜんりゅうこ)パンなどをとりいれるのが効率的です。
○注意すべきこと
 疲れを感じるときは、ついコーヒーや紅茶を飲みたくなりますが、カフェインは体からビタミンやミネラルを排出する働きがあるので、慢性疲労の人は、とりすぎに注意しましょう。

出典 小学館食の医学館について 情報

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