翻訳|furuncle
黄色ブドウ球菌の感染によって発症する膿皮症の一種。俗に疔(ちよう)ともいう。本質的には毛囊炎と同じであるが,臨床的には病巣の大きさで分けられ,毛包周囲から皮下組織まで炎症が波及し,毛包,脂腺の破壊が著しく,汗腺も二次的に破壊されたものをいう。毛包に一致した紅色の丘疹で始まり,しだいに発赤,腫張,圧痛を伴う硬結となり,頂点に膿栓を形成する。これが破れて排膿すると急速に治癒するが,ときに発熱,所属リンパ節炎を併発することもある。かつては顔面に生じたものを面疔と呼び,とくに中央部に生じると血行を介して脳膜炎を起こす危険があるため注意されたが,強力な抗生物質の出現により,あまり問題にならなくなった。また癤が身体各所につぎつぎと生じ,長期間がんこに続く状態を癤腫症というが,これは免疫力低下,新陳代謝異常,副腎皮質ホルモン長期投与などの基礎因子のうえに起こると考えられている。癤の治療は抗生物質の内服と局所の安静が原則であるが,壊死が進んだ場合には排膿を行うことがある。なお,近接した毛包に集合的に癤が生じたものを癰(よう)という。
執筆者:山本 一哉
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
疔(ちょう)ともいい、俗におでき、ねぶと、かたねなどとよばれる。毛孔から化膿(かのう)菌の黄色ブドウ球菌が感染して、毛包、脂腺(しせん)に化膿性炎症をおこしたもので、毛孔を中心として赤い地腫(じば)れを生じ、痛みが激しい。化膿が進むと中央が軟化し、破れて黄白色の膿栓を排出し、急速に痛みや腫れが引いて治る。発熱、悪寒、リンパ管炎、リンパ節炎を伴うことがある。顔に生じた癤は面疔とよばれ、口唇や瞼(まぶた)にできると腫れがひどくなり、口や目があけられなくなる。また静脈炎や髄膜炎を続発することがあったが、抗生物質療法により今日ではほとんどみられなくなった。癤が次々に多発するものを癤腫症(せつしゅしょう)という。糖尿病のときや癤の不完全な治療の場合に多い。癤の治療には安静がたいせつで、圧迫したりひっかいたりすると症状を悪化させる。抗生物質軟膏(なんこう)をはり、水道水で冷湿布するのがよい。切開は十分に化膿してから行うが、現在では早期に抗生物質を内服すると化膿が進まずに治ることが多い。
[野波英一郎]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…数個以上の近接した毛包に黄色ブドウ球菌が感染して化膿性炎症が生じたもの。集合性の癤(せつ)と考えられているが,癤が毛包から皮下組織へと炎症が進むのに対し,逆に皮膚深層に初発変化が起こって表層へと波及してくるものもある。発赤と腫張が著しい隆起性局面を生じ,その上に点々と膿栓を生じる。…
※「癤」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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