改訂新版 世界大百科事典 「登記料」の意味・わかりやすい解説
登記料 (とうきりょう)
登記料とは,土地を買ったり家を建てたりした場合,法務局へ登記しなければならないが,その登記手続に要する司法書士への報酬,登録免許税などの費用を総称する通称である。買主が完全な所有権を取得できるようにするのが売主の義務だとすると,これらいわゆる登記料は,売買契約上の売主側の債務の履行に要する費用であるが,取引の実際においては,登記料とくに登録免許税は買主の負担とする旨の特約が普通であり,それはほぼ慣習法化している。
司法書士への報酬は,〈司法書士法〉(1950公布)における登記申請手続に対して与えられる対価であり,報酬である。その対価ないし報酬は,取扱事件ごとの1件主義の原則がとられている。この1件主義とは,例えば,司法書士が売買による所有権移転登記の依頼を受けたときに,依頼者から依頼の趣旨,目的,所有権の実態関係を聴取し,必要な書類を取りそろえ調査し,物件の登記簿を事前閲覧し,申請書類を作成し,法務局に提出し,登記完了後は法務局から登記済証(いわゆる権利証)の交付を受け,それを依頼者に手交するのであるが,このすべてが包括され1件として規定されているのである。司法書士報酬に関する規定は,司法書士会の会則の必要的記載事項とされているため,法務大臣の認可を受けなければならないが,依頼を受ける登記手続につき,その登記手続を行うにあたり,登録免許税,印紙代などを必要とするため依頼者からそれらの預託を受けることを原則とする。
登録免許税は,〈登録免許税法〉(1967公布)によって,同法別表に掲げる一定の登記について課される国税である。この税は,建物の増築による表示の変更の登記を非課税とし,分・合筆の登記を課税対象としていることなど,担保権の設定登記の場合の課税標準を債権額一本としている(税率1000分の4)。また,課税標準たる不動産価額について,固定資産課税台帳に登録された当該不動産の価額を基準として政令で定めることができるとするなど,課税標準および税額の計算の簡素化,合理化を図っている。現金納付を原則として,一般には,登記によって不動産等に関する財産権の設定,移転,変更等が第三者に対する対抗力を与えられ,権利が保護される利益に着目して課税されるものである。
手数料とは,国,地方公共団体等の施設の利用,行政行為などによって利益を受ける者から必要な実費を償うために徴収するもので,登記完了後に交付する登記簿の謄本の交付手数料が典型的なものである。登録免許税も登記の機会に徴収するものであるから一見手数料のようにもみえるが本質的には異なる。
以上のように,依頼者からみて,司法書士に対して支払う登記料とは,通常つぎの5種のものを加算した額となる(通常はこのうち(2)の登録免許税の額が最も多くなる)。(1)司法書士への報酬,(2)登録免許税,(3)印紙税(契約書,委任状など),(4)法務局に支払う閲覧手数料,登記簿謄本交付手数料,(5)戸籍,住民票などの交付手数料。
執筆者:中村 頼秋
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報