百面相(読み)ヒャクメンソウ

デジタル大辞泉 「百面相」の意味・読み・例文・類語

ひゃく‐めんそう〔‐メンサウ〕【百面相】

顔の表情をいろいろに変えること。また特に、手ぬぐいやつけひげなどの簡単な小道具を用いて、いろいろと顔つきを変えてみせる寄席芸

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精選版 日本国語大辞典 「百面相」の意味・読み・例文・類語

ひゃく‐めんそう‥メンサウ【百面相】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 顔の表情をいろいろに変えること。また、その顔。
    1. [初出の実例]「見よ俗世の他力は、百面相、疑惑、仇(あだ)に綯(な)ひたる縄の如し」(出典帰省(1890)〈宮崎湖処子〉六)
  3. ひゃくまなこ(百眼)
    1. [初出の実例]「支那人の手品、百面相と言ふやうなものもあったやうに覚える」(出典:明治大正見聞史(1926)〈生方敏郎〉明治時代の学生生活)

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改訂新版 世界大百科事典 「百面相」の意味・わかりやすい解説

百面相 (ひゃくめんそう)

寄席芸の一種。顔面の表情と簡単な変装によって,いろいろに人相を変えてみせる芸。もと俳優の身ぶり声色(こわいろ)からでて,これに〈目鬘(めかつら)〉を使って顔面を変えるものが現れ,一種の座敷芸となった。天明(1781-89)のころ,吉原幇間ほうかん)目吉なる者が始めたといわれる〈七変目〉または〈七つ目〉から,文化(1804-18)のころに,落語家三笑亭可楽の門人可上が〈差(さし)目鬘〉のくふうを加え,〈百眼(ひやくまなこ)〉と称した。文政(1818-30)のころ,都川扇玉という者が膝栗毛の弥次喜多のまねを演じて称された。嘉永(1848-54)のころには百眼米吉なる者が,歯磨梅勢散の広告に応用して名高かった。明治に入って落語家初世松柳亭鶴枝が,〈百面相〉と名づけて,寄席芸として独立させた。2世鶴枝がこれを継ぎ,新くふうをこらした。演じ方は,紅鬱金(べにうこん)の手ぬぐいを用い,あるいは付けまゆ毛,付けひげをつけ,恵比須大黒,三人上戸,たこ入道など,顔を下にかくして顔を徐々に上げると,変わった面相になってみせる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「百面相」の意味・わかりやすい解説

百面相
ひゃくめんそう

寄席(よせ)演芸の一種。顔の表情と簡単な変装で、いろいろに人相を変えてみせる芸。天明(てんめい)(1781~89)のころ、吉原の幇間(ほうかん)目吉が目鬘(めかつら)を使って顔を七通りに変える「七変目」「七ツ目」を演じ、座敷芸として知られた。文化(ぶんか)(1804~18)のころに三笑亭可上(さんしょうていかじょう)が目鬘にくふうを加えて「百眼(ひゃくまなこ)」を演じた。文政(ぶんせい)年間(1818~30)には早瀬渡平が鬘や頭巾(ずきん)をつけて顔を七通りに変える「七面相」を演じた。この系統の芸が明治に百面相といわれ、松柳亭鶴枝(かくし)の名がよく知られたが、いまの寄席には百面相の専門家はいない。

[関山和夫]

『南博・永井啓夫・小沢昭一編『芸双書1 いろどる――色物の世界』(1981・白水社)』

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世界大百科事典(旧版)内の百面相の言及

【大衆演芸】より

…その後,この芸は,さまざまな有名人の顔を似せる芸に変化していった。それを百面相というが,今日では,まったく衰退してしまい,ときどき噺家が落語のあとに余興として演ずることがある程度となった。〈八人芸(はちにんげい)〉というものもあった。…

※「百面相」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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