皮膚外用薬(読み)ひふがいようやく

日本大百科全書(ニッポニカ) 「皮膚外用薬」の意味・わかりやすい解説

皮膚外用薬
ひふがいようやく

俗にいう「皮膚病の薬」で、外皮用薬ともいい、皮膚病の局所薬物療法に用いられる薬の総称。皮膚病の局所療法としては、光線療法、放射線療法、外科的療法などもあるが、やはり外用薬物療法がもっともたいせつである。外用薬物療法では、副腎(ふくじん)皮質ホルモン剤、抗ヒスタミン剤、抗生物質、ビタミン剤などの薬物(主剤)を軟膏(なんこう)やローションなどの基剤に添加して外用する。すなわち、疾患によって主剤を決め、症状に応じ基剤を選んで用いるわけで、皮膚科領域では基剤によって皮膚外用薬を分類し、主剤を配合剤とよんでいる。この基剤には、前述軟膏剤やローション剤をはじめ、ゼリー剤、散布剤、液状塗布剤、エーロゾル剤エアゾール剤、噴霧剤)、リニメント剤、パスタ剤、硬膏剤、せっけん剤、湿布剤、パップ剤、浴剤などがある。これらのうち、主な軟膏基剤とこれを用いた軟膏療法について述べる。

[伊崎正勝・伊崎誠一]

軟膏基剤

これには油脂性、乳剤性、水溶性、懸濁性の4種類の基剤がある。

(1)油脂性基剤には鉱物性のもの(ワセリンパラフィン、プラスチベースなど)と動植物性のもの(植物油、豚脂、ろうなど)とがある。その機能は非浸透性である。皮膚の保護作用、皮膚の柔軟作用、痂皮(かひ)(かさぶた)の軟化脱落作用、肉芽形成作用がある。

(2)乳剤性基剤は浸透性で、水中油型基剤(親水軟膏、バニシングクリームなど)と油中水型基剤(親水ワセリン、精製ラノリン、吸水軟膏、加水ラノリン、コールドクリームなど)とに二大別される。浸透作用が強いほか、可洗性であり、皮膚冷却作用がある。また、べとつきがなく使用時の感触がよい。

(3)水溶性基剤(マクロゴール軟膏)は非浸透性で、水性分泌物吸着作用がある。これも可洗性であり、化学的に不活性で薬物と反応しないし、酸化しない。薬物の溶解性や混合性が優れており、高い吸湿性を有し、皮膚病巣面の水性分泌物を吸着して排除、乾燥させる力が強い。

(4)懸濁性基剤は、水を溶媒として保有するヒドロゲル基剤(無脂肪性軟膏、ゲルベースなど)と、水以外の液体を溶媒として保有するリオゲル基剤(FAPG基剤など)に二大別され、ヒドロゲル基剤が非浸透性であるのに対して、リオゲル基剤は浸透性である。

[伊崎正勝・伊崎誠一]

軟膏療法

皮膚病の治療の中心となる皮膚科独特の療法で、主として基剤が皮膚表面の病巣に作用して皮疹(ひしん)を改善に導く場合(主として油脂性基剤による)と、軟膏基剤に添加した薬剤(配合剤)が病巣に達して初めて皮疹の改善をもたらす場合とがある。

 症状の軽い場合は、軟膏を軽く塗布すると効果が得られる。塗布の回数は1日に2、3回が普通である。症状の重い場合、あるいは水疱(すいほう)、びらん、痂皮からなる病巣のように、じくじくと滲出(しんしゅつ)性変化のある場合は、軟膏を病巣に貼布(ちょうふ)したほうが効果的である。貼布に際しては、軟膏をガーゼを2、3枚重ねたものに延ばし、患部に貼(は)る。湿疹で痂皮のある場合は、病巣に副腎皮質ホルモン剤含有軟膏を塗布したのちに、ホウ酸亜鉛華軟膏をガーゼを2、3枚重ねたもの、あるいはリント布に厚く延ばして患部に貼(は)るとよい。このような方法を軟膏重層法という。また特殊な軟膏処置法としては、密封包帯法occlusive dressing technique(略称ODT)がある。これはまず病巣に軟膏を塗布し、その上をサラン紙あるいはポリエチレン紙で覆い、周囲を絆創膏(ばんそうこう)あるいは包帯で気密に固定し、1日に1回交換する。

[伊崎正勝・伊崎誠一]

『阿曽三樹著『皮膚疾患の外用療法』(1988・新興医学出版社)』『西岡清著『皮膚外用剤の選び方と使い方』改訂第2版(1992・南江堂)』『本田光芳監修、矢島純編『薬疹と接触皮膚炎――目でみる薬の副作用』(1998・薬業時報社)』『石橋康正・吉川邦彦編『幼小児によくみられる皮膚疾患』改訂版(1999・医薬ジャーナル社)』『宮地良樹・沢田康文編著『皮膚科薬剤ハンドブック』(1999・先端医学社)』『古江増隆編『皮膚疾患治療エッセンス』(2000・中外医学社)』

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