東洋画における山石(さんせき)などの皴(ひだ)を描く画法。山、土坡(どは)、岩石などの立体感や量感を表現するための一種の東洋的陰影法である。中国では古く秦(しん)・漢代の山岳図にその原始的形態をみることができるが、非写実的・観念的なものといえる。その後、山水画の発展とともに各種の皴法が現れ、さらにこれらが形式化して特定の名称が用いられるようになった。披麻皴(ひましゅん)は麻の緒を開披したような皴の意で、五代~宋(そう)初の画家董源(とうげん)に始まると伝わり、主として南宗画に用いられた線的な皴である。解索皴、乱麻皴、芝麻皴、牛毛皴、荷葉皴などはこの系統に属する。これに対し斧劈(ふへき)皴は斧(おの)で切り開いた劈面のような皴で、面的な性格が強く、北宗画に多く用いられた。これには大小2種あり、大斧劈皴は李思訓(りしくん)(唐)、小斧劈皴は李唐(りとう)(宋)に始まるといわれている。このほか、雨点皴は王維(おうい)(唐)に始まるとされ、董源、巨然(きょねん)らに用いられたのち、北宋の米芾(べいふつ)が完成したもの。米芾のものはとくに米点とよばれ、横点であるが、泥裏抜釘(でいりばってい)皴と称されるものは同じ雨点皴でも竪点(じゅてん)である。元末の文人画風成立後はしだいに増加し、明(みん)末清(しん)初の画論には30種以上の皴法がみえる。
[村重 寧]
東洋画において,山石のひだをかき,立体感と質感を表す画法。山水・樹石画の写実化や,水墨画の興起にともなって,唐末五代のころから現れ始め,しだいに従来の輪郭線と傅彩(ふさい)のみに頼る方法に取って代わった。描く対象の自然,あるいは画家の個性に応じて,多くの方法が発明され,董源,巨然の披麻皴(ひましゆん),范寛の雨点皴,郭煕の鬼面皴,李唐,馬遠の斧劈皴(ふへきしゆん)が知られ,とくに披麻皴は元末四大家や呉派,斧劈皴は南宋院体画や浙派に継承された。
執筆者:曾布川 寛
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…また破墨,潑墨を用いる画家が好んでとりあげた奇樹怪石を,節度ある穏やかなものに置きかえ,用墨と用筆との調和融合を主張し,水墨画の豊かな前途を予見している。 水墨画の技法を代表するのがタッチの世界で,これは皴法(しゆんぽう)と呼ばれ,各地の風景の特徴や画家の心情の違いによってさまざまな皴法が生みだされ,それらはしばしば典型化され,命名され,公式化される。概していえば筆すなわち線描は客観的描写を,墨は主情的表現を象徴するもので,水墨画の世界はこの筆墨二極間に成立する楕円にも比せられ,そこに多様な皴法が展開されるのである。…
※「皴法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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