相場師(読み)ソウバシ

デジタル大辞泉 「相場師」の意味・読み・例文・類語

そうば‐し〔サウば‐〕【相場師】

実物取引をせず、相場変動を利用して、売値買値との価格差によって生じる差金利益を得ることを職業としている人。

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精選版 日本国語大辞典 「相場師」の意味・読み・例文・類語

そうば‐しサウば‥【相場師】

  1. 〘 名詞 〙 取引所で取引される有価証券、商品の相場の変動を予期し、その買い値と売り値、また、売り値と買い値の価格差によって生ずる差金の利益の取得を業とする人。投機師。〔俚言集覧(1797頃)〕
    1. [初出の実例]「扨、米相庭の事、大坂堂島なる所を日本第一の根元とす。同所に相場師と唱へる強勢なるもの有て」(出典:随筆・世事見聞録(1816)五)

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改訂新版 世界大百科事典 「相場師」の意味・わかりやすい解説

相場師 (そうばし)

商品や有価証券(主として株式)を,実需や中長期の投資目的に基づく売買ではなく,売値,買値の価格差金を目的として,投機的に売買し,その差金で生計をたてることを職業とする者をいう。多くは,清算取引信用取引なども利用し,多額の売買をする。その売り買いによって,取引所の市場価格が影響されるほどの者も,しばしば出現する。日本では近世初期,すでに大坂堂島の米会所で,投機取引が発達し,相場師が出ている。1816年(文化13)ころの《世事見聞録》には,米相場は大坂堂島が日本第一の根元で,そこには相場師という強勢なものが多くいて,ひとりで米10万石から100万石ほどを売買したりして,器量くらべ,運くらべをして勝負を決めているとある。近代になって,米の取引は1876年の米穀取引所の規則に従うことになったが,その後も,米相場師は第2次大戦前まで跡を断たなかった。戦後も,繊維,小豆などの商品取引所で相場師が出現することがある。
執筆者: 明治維新以降,欧米の株式制度を取り入れて,1878年に株式取引所(東京株式取引所)を開設したので,相場師の活躍舞台はここにもできた。第2次大戦前の株式市場は投機的取引が中心となり,株屋といわれた株式仲買人の中には,相場師として活躍する人も多かった。東京株式取引所設立当時の怪物天下の糸平こと田中平八は,その最初の大相場師といえる。また日露戦争前後に活躍した鈴木久五郎も相場師として有名である。株式仲買人では,勝負師松辰こと松村辰次郎が,相場師として独特の相場哲学をもっていた。そのほか,戦前は株式の大相場師が多い。戦後は,証券民主化運動が行われ,株式取引が大衆化するとともに,証券取引所も会員組織に改められた。清算取引は禁止されるなど,その後もしばしば証券取引法制の改善が行われて,投機取引が制限されてきた。そのため大型の相場師の活躍舞台はせまくなっているが,相場師が跡を断ったわけではない。
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