小説家。東京都生まれ。千葉県立国府台(こうのだい)高校卒業。幼い頃からマンガ少年で、高校からはアニメーションに凝り『銀河鉄道999』でその傾向は決定的に。高校卒業後アニメーション専門学校に入学。この当時観た「ドラえもん」の映画にショックを受け、やがてアニメーション制作会社に入社。アニメーター、ディレクターとして10年以上のキャリアを積み重ねる。読書歴のほうは、子供の頃にマンガばかり読んでいるのを見かねて、父親が買ってくれた江戸川乱歩の「少年探偵団シリーズ」が最初で「以来、僕の熱中するものにミステリが加わることになった」と本人は語っている。
1991年(平成3)『連鎖』により江戸川乱歩賞を受賞。二度目の応募での栄冠だった。当時は500枚の小説を書くときに、ほぼ全シーンにわたる200枚ほどの綿密なプロットをまず初めに立てたという。『連鎖』は食品衛生監視員を主人公とした、食品輸入にまつわる犯罪を描いた作品で、乱歩賞史上初の本格ハードボイルドと話題になる。続いて『取引』(1992)では公正取引委員会の審査官、『震源』(1993)では気象庁の地震火山研究員と、いずれも平凡な公務員を主人公にしたことから「小役人シリーズ」と呼ばれることになる。彼らはいずれも自分にふりかかってきた問題を解決するために、やむなく事件の渦中に飛び込んでいった人間であった。これらの作品は、評論家にはかなりの評価をもって迎えられたが、本の売れ行き及び一般読者の認知度はさほど高いものではなかったといっていい。そうしたすべてを打破し、ブレークしたのが『ホワイトアウト』(1995)である。巨大ダムを占拠したテロリスト集団と、ただひとり難を逃れて脱出に成功した発電所職員との闘いを描いたこの冒険小説は、吉川英治文学新人賞を受賞。映画化の成功もあって、爆発的ヒットとなり真保裕一の名は瞬く間に広まっていく。さらに続く『奪取』(1996)は偽札造りをテーマにしながら、青春小説のおもむきを持ち、山本周五郎賞と日本推理作家協会賞を同時受賞。その後も交通事故により記憶を失った男性の自分探しをテーマとした『奇跡の人』(1997)、アメリカを舞台に初めての私立探偵小説に挑んだ『ボーダーライン』(1999)、日本からベトナムへと逃亡したやくざと、ベトナムから日本へと脱出したい若者とのそれぞれの葛藤を描いた『黄金の島』(2001)、選挙運動の顛末を描く『ダイスをころがせ!』(2002)など、着実に作風の幅を広げている。
[関口苑生]
『『ボーダーライン』(1999・集英社)』▽『『黄金の島』(2001・講談社)』▽『『ダイスをころがせ!』(2002・毎日新聞社)』▽『『連鎖』『取引』『震源』『ホワイトアウト』『奪取』(講談社文庫)』▽『『奇跡の人』(新潮文庫)』
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