真空地帯(読み)シンクウチタイ

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

真空地帯
しんくうちたい

野間宏(ひろし)の長編小説。1952年(昭和27)2月、河出書房刊。人間を非人間的な兵士に変えていく真空地帯、すなわち軍隊内務班を舞台に旧軍隊と戦争の本質に挑んだ反戦小説。陸軍刑務所から内務班に戻った木谷一等兵は、自分を窃盗の罪に陥れた真犯人を追及していく。インテリである曽田(そだ)一等兵は軍隊内秩序に反抗的な木谷に関心をもって見守る。木谷の探索の過程でやがて内務班の現実、軍事法廷、陸軍刑務所の実態が明らかになっていく。だが、木谷はいったん逃亡を企てたものの、結局前線へ送られることとなる。作者自身の軍隊体験をもとに、日本の軍隊の独特なメカニズムを剔抉(てっけつ)した野間宏の代表作である。発表当時も非常な反響をよび、戦後文学の記念碑的傑作となった。

[紅野謙介]

『『真空地帯』(岩波文庫・旺文社文庫・新潮文庫)』

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精選版 日本国語大辞典の解説

しんくう‐ちたい【真空地帯】

[1] 〘名〙 働きや活動が停止して空白状態にある地帯。
※シベリヤ物語(1950‐54)〈長谷川四郎〉小さな礼拝堂「柵と柵との中間は、細長い、無住の、言わば真空地帯だったが」
[2] 長編小説。野間宏作。昭和二七年(一九五二)刊。人間を非人間的な兵士に変えてゆく軍隊内務班を舞台に、旧軍隊と戦争の本質を問うた作品。

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