野間宏(ひろし)の長編小説。1952年(昭和27)2月、河出書房刊。人間を非人間的な兵士に変えていく真空地帯、すなわち軍隊内務班を舞台に旧軍隊と戦争の本質に挑んだ反戦小説。陸軍刑務所から内務班に戻った木谷一等兵は、自分を窃盗の罪に陥れた真犯人を追及していく。インテリである曽田(そだ)一等兵は軍隊内秩序に反抗的な木谷に関心をもって見守る。木谷の探索の過程でやがて内務班の現実、軍事法廷、陸軍刑務所の実態が明らかになっていく。だが、木谷はいったん逃亡を企てたものの、結局前線へ送られることとなる。作者自身の軍隊体験をもとに、日本の軍隊の独特なメカニズムを剔抉(てっけつ)した野間宏の代表作である。発表当時も非常な反響をよび、戦後文学の記念碑的傑作となった。
[紅野謙介]
『『真空地帯』(岩波文庫・旺文社文庫・新潮文庫)』
中国のゴビ砂漠などの砂がジェット気流に乗って日本へ飛来したとみられる黄色の砂。西日本に多く,九州西岸では年間 10日ぐらい,東岸では2日ぐらい降る。大陸砂漠の砂嵐の盛んな春に多いが,まれに冬にも起る。...