家庭医学館 「睡眠時随伴症」の解説
すいみんじずいはんしょうぱらそむにあ【睡眠時随伴症(パラソムニア) Parasomnias】
睡眠覚醒障害(すいみんかくせいしょうがい)の1つで、睡眠中に異常行動などの好ましくない身体現象をともなうものです。小児期にみられる睡眠時随伴症(「子どもの睡眠中におこる障害(睡眠随伴症)」)には、睡眠時遊行症(すいみんじゆうこうしょう)(夢中遊行(むちゅうゆうこう)、夢遊病(むゆうびょう))、睡眠時驚愕症(すいみんじきょうがくしょう)(夜驚症(やきょうしょう))、悪夢(あくむ)などがあり、高齢者に多いものにレム睡眠行動障害があります。
[症状]
睡眠時遊行症(夢遊病)は、睡眠中に起きあがり、歩き回るなど、比較的複雑な行動をとり、再び就寝するものですが、後でその間の出来事を覚えていません。
睡眠時驚愕症(夜驚症)では、睡眠中に交感神経系の興奮(こうふん)をともない、恐怖の叫びをあげたり、泣いたりして目覚めますが、やはり覚醒後その出来事を想起できません。
悪夢は、睡眠中に恐怖や不安をともなう生々(なまなま)しい夢でうなされ、目覚めるものですが、この場合は、後でその夢の内容を詳しく話せます。
レム睡眠行動障害(コラム「レム睡眠とノンレム睡眠」)では、夢見中の精神活動が行動として表出され、大声をあげる、殴(なぐ)る、蹴(け)る、走るなどの異常行動となります。一般には、目覚めるとただちに異常行動は中断され、直前の夢を思い出すことができます。その夢の内容は異常行動に関連づけることが可能です。
なお、レム睡眠行動障害に似た異常行動に、老年認知症(「老化にともなう心の病気」)などでよくみられる夜間(やかん)せん妄(もう)があります。この場合は、目覚めにくく、目覚めても意識がぼんやりしていたり、異常行動が続いたりし、後でそのことを思い出せません。
[検査]
睡眠ポリグラフィ(コラム「睡眠ポリグラフィ」)によると、睡眠時遊行症、睡眠時驚愕症はノンレム睡眠の深い睡眠段階(第3、第4段階)で生じ、悪夢、レム睡眠行動障害はレム睡眠中に生ずることがわかります。いずれの場合も、脳波により、てんかんではないことの確認が必要です。レム睡眠行動障害では、脳の断層撮影によって脳幹部に血管障害、変性疾患、腫瘍(しゅよう)などがみつかることがあります。
[治療]
睡眠時遊行症、睡眠時驚愕症、悪夢は通常、成長にともない、しだいに自然消失するので心配はいりません。ただし、睡眠時遊行症、睡眠時驚愕症に対して、睡眠第3、第4段階を抑制するベンゾジアゼピン系薬を用いる場合があります。
レム睡眠行動障害に対しては、クロナゼパムなどのベンゾジアゼピン系薬や抗うつ薬が有効です。