ゆ‐ぎょう ‥ギャウ【遊行】
〘名〙
① (━する) 出歩くこと。ぶらぶら歩くこと。歩きまわること。また、放浪すること。
※今昔(1120頃か)七「或時の夕暮に臨て、寺の外に立出でて
遊行する程に羅刹女に値
(あひ)ぬ」 〔法華経‐信解品〕
② (━する)
僧侶が、衆生教化や修行のために
諸国をめぐり歩くこと。
行脚(あんぎゃ)。
※今昔(1120頃か)二「諸の比丘有て遊行して、一の村の中に至る」
※
謡曲・遊行柳(1516頃)「まづ先年遊行のおん下向の時も、古道とて昔の街道をおん通り候ひしなり」
※謡曲・遊行柳(1516頃)「われ
一遍上人の教へを受け、遊行の
利益を六十余州に広め」
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遊行
ゆぎょう
修行僧が説法教化と自己修行を目的として諸国を遍歴し修行すること。行脚(あんぎゃ)修行ともいい、本来の意義は歩き回ったり、経巡ったりすることである。時宗(じしゅう)の開祖一遍上人(いっぺんしょうにん)は、諸国を遍歴教化して念仏を広めたので、とくに彼を「遊行上人」とよび、また総本山の清浄光寺(しょうじょうこうじ)(遊行寺ともいう)の歴代住職もそれに倣うので、同じ呼称を用いる。また「遊行聖(ゆぎょうひじり)」の語もあるが、これは諸国を行脚して民衆の教化に努める僧をいう。
[藤井教公]
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遊行【ゆぎょう】
仏道修行者が布教教化と自己修養のため諸方を遍歴すること。なかでも,拠点寺院を定めず,生涯を通じて遍歴した聖(ひじり)を遊行者といった。奈良時代の行基(ぎょうき)の聖集団,平安時代の空也(くうや)系聖など。鎌倉中期,踊り念仏と賦算の一生を送った一遍(いっぺん)は遊行聖の典型で,〈遊行上人〉と呼ばれ,のち彼の開いた時宗(じしゅう)の指導者を〈遊行上人〉と呼称した。
→関連項目客人
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遊行
ゆぎょう
僧が諸国を遍歴して説法教化すること。飛錫ともいう。インドの仏道修行者が諸方に遊行したことが経典に伝えられ,日本でも古くから行われ,その修行僧は一般に遊行聖 (ゆぎょうひじり) と呼ばれた。のちに時宗の一遍や真教が諸国をめぐって盛んに念仏を広めたことにより,遊行の呼び名は同派の用いるところとなった。
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ゆ‐ぎょう〔‐ギヤウ〕【遊行】
[名](スル)
1 出歩くこと。歩き回ること。
「中川べりに―したり寝転んだりして」〈露伴・蘆声〉
2 僧などが布教や修行のために諸国を巡り歩くこと。行脚。
[補説]書名別項。→遊行
[類語]巡回・巡行・巡歴・遍歴・行脚
ゆう‐こう〔イウカウ〕【遊行】
[名](スル)
1 遊び歩くこと。
「外国に―して一時歓娯を極むるに似たれども」〈織田訳・花柳春話〉
2 さまようこと。
「一度肉体死するや、其霊魂は、―して」〈宮本・伸子〉
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ゆぎょう【遊行】
仏道(宗教)修行者が布教教化のため諸方を遍歴すること。釈尊も実践している。古代日本の官寺仏教は,僧尼令で山林修行を除き,遊行を認めていない。しかし,聖(ひじり)と称された私度僧や沙弥(しやみ),優婆塞(うばそく),持経者たちの間では遊行乞食(こつじき)が宗教実践であった。それは仏教渡来以前の日本固有の山岳宗教とも結びついていたし,日本古代宗教の神の遊幸信仰とも関係していた。神や祖霊は,遊行聖に憑依して諸方を訪れるのであり,聖は一種の客人神として恐れと尊敬の念で迎えられた。
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世界大百科事典内の遊行の言及
【時宗】より
…一遍は,1271年(文永8)から74年にかけて,信濃国の善光寺,伊予国の窪寺,紀伊国の熊野本宮などで参籠修行を行い,独自の悟りを開いた。なかでも74年に,念仏の札を信・不信を問わずにくばるようにという熊野権現の神託を受けて以来,16年にわたる遊行の活動を続け,その足跡は,北は奥州から南は大隅国に及んだ。一遍の信仰は,阿弥陀如来を信仰しつつも,〈南無阿弥陀仏〉の名号に救いの絶対的な力があり,ひたすら名号をとなえよというものであった。…
【旅】より
…聖地が旅の対象となった巡礼は,まさにこの種の旅の社会的装置化であり,逆に聖地巡礼という旅の形式が存在する理由は,こういう旅の性格を考えるとき,もっともに思えてくる。また放浪の旅人が,遊行者として聖なる眼で見られるのも,所用にみちた日常的関係世界に対する反世界に生きる人だからだろう。 さて離脱の動機ないし効用はさらにもう一つ考えられる。…
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