矢銭(読み)ヤセン

デジタル大辞泉 「矢銭」の意味・読み・例文・類語

や‐せん【矢銭】

《矢の費用の意》戦国大名などが賦課した軍用金農村では反別基準とした。

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精選版 日本国語大辞典 「矢銭」の意味・読み・例文・類語

や‐せん【矢銭】

  1. 〘 名詞 〙 ( 矢の費用の意 ) 戦国武将などが一般庶民に軍用として課した金。軍用金。
    1. [初出の実例]「当郷え矢銭之儀申懸候時」(出典:厳助大僧正記‐下・天文一五年(1546)八月朔日)

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改訂新版 世界大百科事典 「矢銭」の意味・わかりやすい解説

矢銭 (やせん)

戦国時代,武将によって課せられた軍用金をいう。すでに軍用米・金としては兵粮料ひようろうりよう)があったが,これは恒常化する傾向にあり,そこで新たに臨時賦課の矢銭ができた。織田信長が入洛したとき,摂津和泉に矢銭をかけ,とくに堺に2万貫,石山本願寺に5000貫を課したことは著名。また都市の特権として矢銭・兵粮米銭の免除があげられている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「矢銭」の意味・わかりやすい解説

矢銭
やせん

戦国期に大名・武将が臨時に課した軍事費用。京都醍醐(だいご)寺理性院(りしょういん)の僧厳助(ごんじょ)〔「げんじょ」ともいう〕の日記である『厳助往年記』の1546年(天文15)8月の記録によると、三好孫二郎(みよしまごじろう)は、同年5月の山城(やましろ)国田原(たわら)成敗の際に、田原七郷に対して棟別に矢銭を課している。また織田信長が、1568年(永禄11)9月に足利義昭(あしかがよしあき)を奉じて入京し、翌月に堺(さかい)に2万貫、本願寺に5000貫など、摂津(せっつ)・和泉(いずみ)2か国で矢銭を課したのは有名である。矢銭は棟別(家別)に課されたもののほかに、段別(土地面積別)に課されたものもある。

[鈴木敦子]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「矢銭」の解説

矢銭
やせん

箭銭とも。戦国期,武将が町・郷村・寺社に賦課した軍用費。陣取をした際に臨時に賦課した。室町幕府の禁制では,1530年代半ば頃から兵粮米とともに矢銭をかけることを禁じている。郷村や寺社領の場合は棟別銭(むねべつせん)として,町の場合は地口銭(じぐちせん)として転化されたのであろう。織田信長は1568年(永禄11)に本願寺から5000貫文を拠出させ,和泉国堺にも2万貫文を課して拒否されたことは有名。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「矢銭」の意味・わかりやすい解説

矢銭
やせん

戦国時代,幕府,諸大名によって賦課された軍資金の名称。南北朝時代以来の兵粮料が恒常化するにつれて,新たに臨時の賦課税として矢銭が課されるようになった。賦課の基準は農村では反別 (たんべつ) ,都市では棟別であった。

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