硫化バリウム(読み)りゅうかバリウム(その他表記)barium sulfide

改訂新版 世界大百科事典 「硫化バリウム」の意味・わかりやすい解説

硫化バリウム (りゅうかバリウム)
barium sulfide

化学式BaS。硫酸バリウムBaSO4(工業的には重晶石)を炭素Cとともに600~800℃に熱し,還元して製造される。

 BaSO4+2C─→BaS+2CO2

無色結晶(等軸晶系)。比重4.25(15℃)。Ba2⁺とS2⁻のイオンから成る岩塩NaCl型のイオン結晶で,融点は2000℃以上と高いが,空気中で酸化されて黄色をおび,湿気にあうと硫化水素を発生するなど,反応性に富む。水には不溶だが,徐々に加水分解して硫化水素バリウムBa(HS2水酸化バリウムBa(OH2を生ずる。

 2BaS+2H2O─→Ba(OH)2+Ba(HS)2

酸にはよく溶け,対応するバリウム塩となる。

 BaS+2HCl─→BaCl2+H2S

硫酸亜鉛ZnSO4と反応させると,どちらも水に不溶,白色安定な硫酸バリウムと硫化亜鉛混合物が得られ,これはリトポンと呼ばれる白色顔料となる。

 ZnSO4+BaS─→BaSO4+ZnS

硫黄とバリウムの化合物にはこのほかBaSnn=1.75,2,3,4など)のような組成をもつ多硫化物と呼ばれるものもあり,それらの混合物は淡褐色粉末硫化バリウム華ともよばれ,殺虫剤脱毛剤などの用途がある。なお,微量不純物を含む硫化バリウムはリン光を発することも知られている。
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化学辞典 第2版 「硫化バリウム」の解説

硫化バリウム
リュウカバリウム
barium sulfide

BaS(169.39).約1000 ℃ に熱した炭酸バリウムに硫化水素と水素との等モル混合気体を通じると得られる.無色の立方晶系結晶.密度4.25 g cm-3(15 ℃).融点2200 ℃.空気中では酸化されてチオ硫酸バリウムを生じる.また,水分と二酸化炭素を吸収して硫化水素を発生する.水を加えると加水分解して硫化水素バリウムと水酸化バリウムを生じる.酸に溶けて硫化水素を発生する.エタノールに不溶.白色顔料リトポンの製造に用いられる.また,微量のほかの重金属を含むと蛍光を発するので,蛍光塗料にも用いられる.ほかに多硫化物として三硫化バリウムBaS3[CAS 12231-01-5](黄色の結晶,400 ℃ で分解,水に易溶),四硫化バリウム(淡赤色,斜方晶系柱状晶,200 ℃ で分解,水に易溶)があり,これらの混合物(硫化バリウム華という)は殺虫剤,皮革の脱毛剤として用いられる.有毒.[CAS 21109-95-5]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「硫化バリウム」の意味・わかりやすい解説

硫化バリウム
りゅうかばりうむ
barium sulfide

バリウムと硫黄(いおう)の化合物。通常、バリウムの一硫化物のことをいい、他はポリ硫化バリウムとよばれる。重晶石(硫酸バリウム)を600~800℃で炭素で還元することによって製造される。実験室的には、加熱した炭酸バリウムに硫化水素と水素の等量混合ガスを通ずる方法がある。白色の結晶性粉末であるが、市販品は灰色を帯びる。空気中では酸化され、黄色からオレンジ色に変わる。湿気中で硫化水素を発生する。水には溶けないが、徐々に加水分解を受け、硫化水素バリウムと水酸化バリウムを生成する。不純物を含むものはリン光を発する。脱毛作用がある。硫化亜鉛と混合して白色の顔料(リトポン)を製造するのに用いられる。

[鳥居泰男]


硫化バリウム(データノート)
りゅうかばりうむでーたのーと

硫化バリウム
  BaS
 式量  169.4
 融点  1200℃
 沸点  ―
 比重  4.25(測定温度15℃)
 結晶系 立方

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「硫化バリウム」の意味・わかりやすい解説

硫化バリウム
りゅうかバリウム
barium sulfide

化学式 BaS 。無色立方晶系結晶。融点 2200℃以上,比重 4.25,有毒。冷水に微溶,塩化アンモニウム溶液に可溶,酸によく溶け硫化水素を発生する。空気中では酸化されて黄色を呈し,湿気により硫化水素を発生する。脱毛剤,リトポン製造,ゴムの加硫,硫化水素の発生用試薬などとして用いられる。黒色硫化バリウムは,硫酸バリウム鉱と木炭の混合物を強熱して得られる粗製品で,硫化バリウムの含有量は 60~70%である。バリウム塩の製造原料として重要である。

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