愛知県中南部にある市。1948年(昭和23)大浜(おおはま)、新川(しんかわ)、棚尾(たなお)の3町と旭(あさひ)村が合併して碧南市として市制施行。矢作川(やはぎがわ)河口に位置し、衣浦(きぬうら)臨海工業地域を形成している。名古屋鉄道三河(みかわ)線、国道247号が通じ、衣浦湾対岸の半田市との間は海底トンネルで結ばれている。大浜港は室町時代から発展してきた港町で西三河地方の海の玄関口、沼津藩陣屋も置かれ、江戸時代は北東方の鷲塚(わしづか)湊などとともに三河五箇所湊(みなと)の一つに数えられて江戸廻船(かいせん)の基地、矢作川舟運の結節点として栄えた。また、大浜塩の産地であり、後背地で生産された酒、みりん、瓦(かわら)などの江戸への搬出港としても知られた。1957年には衣浦湾沿岸7港とともに重要港湾に指定され、臨海工業地域が造成されその中核港湾となった。新川の三州瓦、棚尾の鋳物、大浜のみりんの特産があり、矢作川沿いの前浜新田、碧南干拓地ではニンジン栽培が盛んである。鷲塚は1871年(明治4)、神仏分離政策に反対して起こった大浜騒動の舞台となった。面積36.68平方キロメートル(境界一部未定)、人口7万2458(2020)。
[伊藤郷平]
『『碧南市史』全5巻(1958~1998・碧南市)』
愛知県西三河地方南部,矢作(やはぎ)川河口西岸に位置する市。1948年市制。人口7万2018(2010)。市内中央部の洪積台地上に集落が発達し,東部の矢作川沿岸と北部の油ヶ淵周辺には近世の干拓新田が展開している。衣浦(きぬうら)湾に面する大浜は,室町時代から港町として開かれ,近世には江戸廻船の基地にもなった。当時,江戸に搬出されていた三州瓦,みりん,鋳物は現在も伝統工業として盛んに生産されている。1957年に衣浦港が重要港湾に指定されたのを契機に臨海用地の造成が進み,自動車,鉄鋼,食品などの企業が進出して,港湾工業都市の色彩が強くなった。73年には半田市との間に海底トンネルが開通し,知多側との交流がさらに緊密になっている。農業は従来の米作中心から野菜,花卉の栽培を主体とした近郊農業へと移行しつつある。名鉄三河線が通じる。
執筆者:溝口 常俊
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