所得税または法人税について,税務署長の承認を得て青色の申告書(青色申告書)を用いてなす納税申告。これに対して,通常の申告書による申告を白色申告と呼ぶことがある。所得税の場合には,不動産所得,事業所得または山林所得を生ずべき業務を行う居住者に限り青色申告の適格がある。青色申告制度は,申告納税制度の定着を図るため,納税者が帳簿書類を備え付けて正確な申告をなすことを促進する目的で,シャウプ勧告に基づいて1950年に採用された。この制度の普及を図るために青色申告を行う者に各種の租税上の特典を与えている。各種の租税特別措置が青色申告を要件として適用され(割増償却,特別償却,準備金など),所得税については,青色事業専従者給与,青色申告特別控除が認められる。青色申告者には,かねて定額(10万円)の青色申告控除が認められていたが,93年からは,みなし法人課税制度の廃止の見返りとして,青色申告控除制度のかわりに,青色申告特別控除制度が設けられた。このような措置および行政レベルの奨励により,青色申告は高い普及率を示している(1996年に,個人所得税で約50%,法人税では約98%)。
青色申告者は,資産・負債および資本に影響を及ぼす一切の取引を,所得税にあっては,〈正規の簿記の原則〉に従い,法人税にあっては,〈複式簿記の原則〉に従い,それぞれ整然かつ明りょうに記録しなければならない。仕訳帳,総勘定元帳その他必要な帳簿を備え付け,取引に関する事項を記載しなければならない。帳簿書類の備付け・記録・保存が不十分である場合や,帳簿書類に隠ぺい仮装の記載があるなど記載事項の全体についてその真実性を疑うに足りる相当の理由がある場合には,青色申告の承認を取り消されることがある。青色申告者が申告をした後に税務署長が更正する場合には,申告書等の上で計算に誤りがあることが明らかである場合を除き,帳簿書類の調査を経なければならず,推計課税も許されない。また,更正通知書には,更正の理由を付記しなければならない(所得税法155条,法人税法130条)。これは,判断を慎重ならしめ,かつ,不服申立の便宜のためであるとされている。
→申告納税 →推計課税
執筆者:碓井 光明
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シャウプ勧告に基づく1950年(昭和25)の税制改正によって採用された所得税と法人税に関する申告納税制度。この制度による申告は青色の申告用紙を使うことからこの名がある。青色申告を行うには、税務署長の承認を受けて、法律の定めた一定の帳簿書類を備え、その記帳を正確かつ系統的に行うことが要請されるが、他方、この申告による納税者に対しては、申告納税制度の健全な発展を図る意味合いから、一般の納税者(その申告制度を白色(はくしょく)申告という)には与えられない種々の特典、たとえば、申告書の税務当局による更正に対する制限、欠損金の繰越し、繰戻し、各種必要経費や控除などが認められている。
[林 正寿]
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(浦野広明 立正大学教授・税理士 / 2007年)
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…相続税を,相続財産および贈与財産について一生を通じる累積課税としたのも,資産保有の集中を防ぎ,高額資産に確実に課税しようという趣旨である。税務行政改善のためにいわゆる青色申告を導入したのもこの勧告の重要な貢献であった。 第2に,地方自治確立のために基礎的自治体である市町村の財政力を強化すること,地方の課税自主権確保のために付加税を廃して税源分離=独立税主義をとること,地方税制の簡素化を図ること,を勧告した。…
※「青色申告」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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