翻訳|ganglion
末梢神経系における神経細胞体の集合をいう。これに対し,中枢神経系(脳と脊髄)内における神経細胞体の集合を(神経)核nucleus(細胞の〈核〉と文字は同じであるが概念はまったく違う点に注意)という。しかし,中枢神経内の神経細胞体の集合に対しても慣用的に〈節〉が用いられている場合がある(たとえば基底神経節basal ganglia)。本来の意味での神経節,すなわち末梢神経系における神経細胞体の集合には,集合している神経細胞の性質の違いによって,感覚神経節sensory ganglionと自律神経節autonomic ganglionが区別される。感覚神経節の神経節細胞は特徴的な形をしている。すなわち,円形の細胞体からはただ1本の突起が出るが(神経細胞は複数の突起をもつのが普通である),これはすぐに末梢性突起と中枢性突起に2分岐する(これを偽単極性という)。末梢性の突起は,その末端から細胞体の方向へと情報を伝えるから,興奮伝導の方向だけからみれば末梢性突起は一般のニューロンの樹状突起にあたる。しかし,感覚神経節細胞の末梢性突起の組織像と一般のニューロンの軸索のそれとは区別がつかない。髄鞘をかぶっているもの(有髄)もあれば,無髄のものもあり,通常,軸索として取り扱われている。中枢性突起のほうは,中枢神経内に入って中枢神経系のニューロンとシナプス結合する。末梢性突起のほうは,その末端が自由終末free nerve endingとなっているもの(痛覚繊維などの場合),特別の被膜をもつもの(被膜性終末encapsulated nerve ending。たとえば層板小体,マイスネル小体など),感覚細胞sensory cellと連絡するものなどがあり,皮膚,筋,筋膜,関節,骨膜,内臓,血管など身体各部からの情報は,すべて感覚神経節のニューロンによって中枢神経系に伝達される。しかし,伝達する情報(意識にのぼるものも,のぼらないものもある)の種類に対応して感覚神経節ニューロンの形を区別することは,現在のところではできない。脊髄神経の領域では,31対の脊髄神経のそれぞれに対応して31対の感覚神経節がある。これを脊髄神経節spinal ganglionという。脊髄神経節は,前根と後根が合一して脊髄神経が形成される直前のところで後根の途中にあり,その中枢性突起こそが後根を形成する神経繊維であるから,脊髄神経節を後根神経節ともいう。脳神経の領域にも,三叉(さんさ)神経節,膝神経節,らせん神経節,頸静脈神経節,節状神経節,岩様部神経節などいくつかの感覚神経節がある。脳神経の感覚神経節細胞のなかには,偽単極性ではなくて,双極性(末梢性突起と中枢性突起が初めから別々に細胞体から出ている)のものもある。らせん神経節の神経節細胞などはその例である。
自律神経節の神経節細胞は,一般的なニューロンの形をしており,複数の樹状突起と1本の軸索をもつ。自律神経節細胞は,自律神経起始ニューロン(細胞体は中枢神経系内にある)の軸索(節前繊維)からの入力を受け,次いでみずからの軸索(節後繊維)によって平滑筋,心筋,腺などを支配する。自律神経節は,集合しているニューロンがノルアドレナリン作動性の場合には交感神経節,アセチルコリン作動性の場合には副交感神経節と呼ばれることがある。星状神経節などの交感神経幹神経節や腹腔神経節などは前者の例であり,毛様体神経節,舌下神経節,顎下神経節,耳神経節,翼口蓋神経節などは後者の例である。
執筆者:水野 昇
無脊椎動物でも,扁形動物,環形動物,軟体動物,節足動物などでは,神経系の中に数ヵ所,神経細胞の集中している部位があり,やはり神経節と呼ばれる。とくに体の前端部にある大きな神経節は複雑に分化し,神経活動を統合するので〈脳〉とも呼ばれる。脊椎動物では,ヒトの場合と同じように,末梢神経系にあるものをいう。脊椎動物の祖先型と考えられるナメクジウオでは,脊髄神経の後根にあるべき脊髄神経節はなく,神経細胞は脊髄自体の内に残っている。脊椎動物になると,末梢受容器からの興奮に誘引されて細胞体が脊髄から外に出て神経節を形成する。また交感神経幹から末梢に,あるいは臓器の壁にある自律神経系の神経節の細胞は,はじめ節前繊維との連絡のため脊髄の近くにあったが,軸索が末梢器官からの情報を受けて反射を起こすようになって(軸索反射),細胞が末梢に移動したと考えられる(カッパーズC.U.A.Kappersの神経走成説)。神経節は神経管の形成の過程で分化するが,神経冠neural crest(神経堤ともいう)の細胞が末梢の各所に神経節をつくる経過は,最近ニワトリの神経冠にニワトリと区別できるウズラの細胞を移植して追跡する方法で明らかにされた。
→自律神経系 →神経系
執筆者:正井 秀夫
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… プラナリアのような扁形動物では,はしご型で左右の索は互いに節状に横に走る繊維で連絡され,また索から末梢へ細い繊維が出て体の表面下に,あるいは消化管の壁に神経叢をつくる。環形動物たとえばミミズでは,腹側の神経索に沿って,各節ごとに細胞の集団つまり神経節が形成される。体の前方で咽頭の上にある神経節すなわち脳はよく発達し,神経系の集中化が進む。…
…脊椎動物の神経系において神経作用の支配的な中心をなしている部位をいい,無脊椎動物では頭部背側にある食道上神経節を脳または頭神経節という。脊椎動物では,脳(頭蓋腔のなかにある)は脊髄(脊柱管のなかにある)とともに中枢神経系を形造っているので,脳は中枢神経系の部分であるわけであるが,〈脳〉という言葉は,中枢神経系を代表するものとして〈中枢神経系〉の意味で用いられることもある。…
※「神経節」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
[1973~ ]プロ野球選手。愛知の生まれ。本名、鈴木一朗。平成3年(1991)オリックスに入団。平成6年(1994)、当時のプロ野球新記録となる1シーズン210安打を放ち首位打者となる。平成13年(...
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