祠堂銭(読み)しどうせん

精選版 日本国語大辞典 「祠堂銭」の意味・読み・例文・類語

しどう‐せん シダウ‥【祠堂銭】

建内記‐嘉吉元年(1441)閏九月一〇日「祠堂銭とは、禅家に為師匠仏事置足借与諸人、以其本利可行法事料之事也」

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改訂新版 世界大百科事典 「祠堂銭」の意味・わかりやすい解説

祠堂銭 (しどうせん)

中世とくに室町時代に,主として禅宗寺院が行った金融貸付けの銭。祠堂というのは,禅宗寺院に特有の堂で,死者位牌を安置し,その冥福を祈ることを目的とした建物である。本来祠堂銭は信者が入牌料あるいは供養料として祠堂に寄進した銭貨であった。禅宗寺院はこれを蓄積し,はじめは寺内の困窮者の救済,堂舎の修理に利用しており,それが本来の用途であったが,やがて寺内での金融貸付けに利用するようになった。こうした祠堂銭の寺内金融への運用に対して,幕府はこれを禁止したが,祠堂銭の貸付けは寺外へも拡大され,15世紀中葉には伊勢,熊野,日吉3社とならぶ代表的な寺社金融となった。室町時代の後期から戦国時代にかけて,祠堂銭の金融は拡大の一途をたどった。それは禅宗寺院そのものへの幕府の保護と,くりかえし発令された貸借契約破棄の徳政令に対して祠堂銭が法令の対象から除外されたことによる。そこに祠堂銭の特徴があった。一般に寺社が金融・貸付けする米銭は,神物あるいは仏物寺物と呼ばれ,単なる米銭ではなく,〈神あるいは仏の物としての米銭〉として濃く宗教性を帯びていたので,その神や仏の力が債務者に返済義務厳守を強く促すものであった。中でも祠堂銭は,冥界の死者と結びついたものとして,その仏物的性格がより具体的に強められたものといえよう。それはむしろ仏神人間に対する精神的呪縛力の衰退表現とみられる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「祠堂銭」の意味・わかりやすい解説

祠堂銭
しどうせん

死者の冥福(めいふく)を祈るため、寺院の祠堂の運営や修理費として寄進された金銭。室町時代以降荘園(しょうえん)や所領などからの年貢徴収が困難となっていた多くの寺院では祠堂銭を貸付元本として運用して利子を稼いだり、田畠(でんぱた)(得分(とくぶん)権)の購入資金にあて、寺院財政の窮状打開のための財源とした。禅宗寺院における祠堂銭の貸付、それによる土地集積が顕著であった。室町幕府は寺院の祠堂銭貸付を保護し、その貸借が寺院の祠堂帳に記載登録されていて貸付利子が月二文子(にもんし)、すなわち2%以内の祠堂銭貸付については徳政令の適用を免除した。江戸時代になっても祠堂金・祠堂銀の貸付は行われ、幕府はこれを保護した。

[佐々木銀弥]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「祠堂銭」の解説

祠堂銭
しどうせん

死者の供養や祠堂修復などの名目で寺に寄進された銭で,寺院金融の資金として利用された。その蓄積・貸付は禅宗寺院に始まり,室町時代に2文子(もんし)(月利2%)という低利率(当時の標準は4~6文子)を背景に急成長し,また幕府から徳政免除の特権を獲得したことで,諸宗の寺院金融も多く祠堂銭と称した。江戸時代にも,とくに中期以降,幕府の保護のもとに名目金(みょうもくきん)の一種としての祠堂金の貸付が盛んに行われた。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「祠堂銭」の意味・わかりやすい解説

祠堂銭
しどうせん

おもに禅宗寺院で,死者の冥福を祈るため,祠堂へ供養料,修理料として信者が寄進した銭貨などの財物。中世には貸付銭として運用され,寺社金融の中心となった。元来,貸付けの目的が寺内困窮者の救済にあったため,低利で,徳政の適用を受けなかった。

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旺文社日本史事典 三訂版 「祠堂銭」の解説

祠堂銭
しどうせん

鎌倉・室町時代,死者の供養や祠堂(位牌を安置する堂)の修理のため寺に寄進された金銭
特に室町時代に盛ん。おもに禅寺で,これをもとでに金融を行ったが,低利のため徳政令からは除外された。江戸時代には祠堂金(銀)と呼ばれ特定寺院に許され,高利で,寺院の重要な財源となった。

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