改訂新版 世界大百科事典 「科学者憲章」の意味・わかりやすい解説
科学者憲章 (かがくしゃけんしょう)
世界科学労働者連盟(WFSW)は,科学(労働)者が社会において責任のある公認された地位をもつことを目的として,1948年の第1回総会において科学者憲章を採択した。この憲章は,前文と7章52項から成り,科学者の責任を明確にする一方で,科学者の地位や科学者をとりまく諸条件について,かなり具体的な提案も行っている。また国際学術連合会議(ICSU)も,科学者は一般市民としての義務に加えて,特別の責務を負っていること,そしてその責務を果たすためにどのような権利を主張すべきかなどをめぐって,49年独自の科学者憲章を採択している。さらに日本学術会議も,科学研究の担い手としての科学者の主体性の確立と,それに伴う社会的責任の明確化を目ざして,80年科学者憲章を採択した。そこでは次の5項目の遵守がうたわれている。(1)自己の研究の意義と目的を自覚し,人類の福祉と世界の平和に貢献する。(2)学問の自由を擁護し,研究における創意を尊重する。(3)諸科学の調和ある発展を重んじ,科学の精神と知識の普及を図る。(4)科学の無視と乱用を警戒し,それらの危険を排除するよう努力する。(5)科学の国際性を重んじ,世界の科学者との交流に努める。
執筆者:成定 薫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報