空気や海水などによって水蒸気、塩分などの物質や、圧力、温度、密度、運動量などの流体のもつ物理量が運ばれる過程を移流という。たとえば、ある地点における気温の変化を考える場合、空気がその場所に停留していて、太陽熱などによって暖まったり冷えたりするためにおこる変化と、冷たい空気あるいは暖かい空気が他の場所からその地点に流れ込んでくるためにおこる変化とに分けられる。後者が移流による気温変化である。いま注目する物理量をAとし、流体の実質部分の速度をV、実質部分についてのAの時間的変化をdA/dt、ある固定点におけるAの局所的時間変化を∂A/∂tとすれば、次式となる。
右辺の第2項は移流による輸送の効果を表し、移流項とよばれる。三次元直交座標系でVのx、y、z方向の成分をu、v、wとすると、移流項は次式で表される。
このうち、前2項を水平移流項、最後の項を垂直移流項とよぶ。また、ある固定点における物質または物理量の局所的時間変化率のうち、移流によるものを移流効果という。気象学や海洋学では、移流は水平運動について考える場合が多い。
気象観測は固定点での大気の状態を測定するものであり、天気予報はその固定点周辺の気象を予測するものであるから、つねに移流効果を考えて行う必要があり、その点からも、移流は気象学では重要な概念になっている。移流はまた、単に気団が水平方向に大きく動く意味に用いられ、それによっておこる現象に移流の名がつけられることがある。たとえば、湿った暖かい気団が冷たい地表(海面、地面)に移動するとき、その下層部が冷やされてできる霧を移流霧という。また、高層への寒気の移流または低層への暖気の移流によって、気温の上下差が大きくなり大気の成層が不安定となっておこる雷雨を移流雷とよぶことがある。
[倉嶋 厚]
大気や海洋中の物質または物理量の分布状態が,そのままの形で流体の運動,すなわち流れによって移動する過程をいう。流体中の物質としては,例えば水蒸気,微量ガス,エーロゾル,塩分など,物理量としては運動量,エネルギー,渦度,顕熱などがある。
流体中の物質の量や物理量をqで表すと,ある点におけるqが移流によって変化する割合は,デカルト座標を用いて次のように書ける。
ここでu,v,wは流速のx,y,z方向の成分である。流速の水平成分および鉛直成分による移流を,それぞれ水平移流,鉛直移流という。上式でxy面が水平面とすると,はじめの2項が水平移流項,第3項が鉛直移流項を表す。気象学や海洋学では水平移流を略して単に移流といい,鉛直移流を対流とよぶ場合が多い。
執筆者:菊池 幸雄
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