日本大百科全書(ニッポニカ) 「稲美」の意味・わかりやすい解説
稲美(町)
いなみ
兵庫県南部、加古郡にある町。1955年(昭和30)加古、天満(てんま)、母里(もり)の3村が合併、町制施行して成立。このあたりは『万葉集』にいう「いなみの」(印南野)の地で、町名もそこに由来する。地形は東高西低の隆起扇状地で、水利の便が悪く、近世の開発でようやく水田化が始まった。大小86の溜池(ためいけ)があり(2021)、天満大池は兵庫県最古、加古大池は兵庫県最大の溜池である。神戸市の西郊に位置し、野菜、花卉(かき)などの園芸農業が発達するが、播磨(はりま)工業地域に含まれ、日立建機などの工場も立地する。なお、1996年(平成8)に印南で、1880年(明治13)に開園した国営播州葡萄園(ばんしゅうぶどうえん)の遺構が発見された(国指定史跡)。面積34.92平方キロメートル、人口3万0268(2020)。
[二木敏篤]
『『稲美町史』(1982・稲美町)』