穴観音古墳(読み)あなかんのんこふん

日本歴史地名大系 「穴観音古墳」の解説

穴観音古墳
あなかんのんこふん

[現在地名]鳴門市大麻町大谷

西山田にしやまだにある古墳時代後期の円墳大谷おおたに川扇状地西側の丘陵に広がる二十数基から構成される古墳群に含まれる。古墳群のほとんどは東林とうりん院墓地となっているが、これらのうち一基が横穴式石室を利用した観音堂となっている。主体部は胴張形無袖式横穴式石室で、羨道は損壊している。石室主軸方位は磁北から四八度西に振っており、南東に開口する。主体部現存全長は二・八メートル。玄室長二・三六メートル、奥壁幅一・五八メートル、胴部最大幅一・七二メートル、玄室口幅一・二六メートル、奥壁高一・四二メートル、玄室口高一・三五メートル。

穴観音古墳
あなかんのんこふん

[現在地名]岩美町大谷 沓掛

駟馳しち山の南東山麓に築造された横穴式石室を埋葬施設とする円墳。周辺には八基余の古墳がみられ小畑こばたけ古墳群と称される。同古墳群中で最大のもので、規模は径一九メートル、高さ三・九メートル。石室の全長は一一・三メートルで、玄室は奥行五・五メートル、幅一・六メートル、天井高さ二・九メートルを有する。石室の形態は玄室天井を「中高天井」とする因幡東部に独特のもの。

穴観音古墳
あなかんのんこふん

[現在地名]日田市内河野

日田盆地の南西部、盆地を流れる三隈みくま川を望む台地上にある。国指定史跡一帯は弥生時代から中世の複合遺跡として知られる。墳丘の径二〇メートルほどの円墳で、内部主体は複室構造の横穴式石室。石室は南面に開口し羨道部を欠くが、現状で全長七メートル、前室の奥行二・六メートル、幅二・三メートル。玄室は奥行三メートル、幅二・三メートル。石室には大型の腰石を用い、持送りの少ない長方形のプランをもつ。その規模・構造ともに大分県下を代表する石室。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

国指定史跡ガイド 「穴観音古墳」の解説

あなかんのんこふん【穴観音古墳】


大分県日田市内河野にある古墳。日田盆地を流れる三隈(みくま)川(筑後川の日田盆地での地域称)左岸の台地に位置する。筑後川流域の代表的な装飾古墳として、1933年(昭和8)に国の史跡に指定され、2005年(平成17)に追加指定があった。直径約10m、高さ約2mの墳丘を残す円墳で、主体部は、南に開口する複室の横穴式石室で、羨道(せんどう)部を失っているが、全長7.2m、後室奥行き3m、幅2.3m、前室奥行き2.6m、幅2m。装飾文様は後室奥壁と右側壁、前室左右の側壁に赤と緑の2色で描かれ、図柄は、後室奥壁に同心円文と連続する三角文の幾何学的文様を配し、右側壁に円文や鳥などがある。前室左右の壁面には、同心円文、舟、両手足を広げた人物が描かれており、築造は6世紀末~7世紀初頭と推定される。装飾は、自然発生的な要素が強いが、一部を彫りくぼめる技法も見られる。後世、後室に石仏を安置したことから、穴観音と呼ばれるようになった。JR久大本線日田駅から車で約15分。

出典 講談社国指定史跡ガイドについて 情報

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