(読み)かま

精選版 日本国語大辞典 「竃」の意味・読み・例文・類語

かま【竈・釜・窯・罐・缶】

  1. 〘 名詞 〙
  2. [ 一 ] ( 竈 )
    1. 土、石、煉瓦などでまわりをかこんで火をたき、上に鍋、釜などをかけて、煮たきするようにした装置。かまど。へっつい。
      1. [初出の実例]「屯倉首、命(ことお)きて竈(カマ)(わき)に居(す)ゑて、左右(こなたかなた)秉燭(ひとも)さしむ」(出典:日本書紀(720)顕宗即位前(図書寮本訓))
      2. 「しばしといはせけれど、人の家に逃げ入りて、かまのしりへにかがまりてをりける」(出典:大和物語(947‐957頃)一四八)
    2. ( 炊飯を行なうかまどで一家を象徴するところから転じたものか ) 自分の領分。領域。また、自分の仲間や味方。釜の字をあてることも多い。
      1. [初出の実例]「こふ云女郎は、たてごかしにして、こっちの釜(カマ)にすると、又よき事あり」(出典:洒落本・傾城買四十八手(1790)見ぬかれた手)
    3. ( かまどを預かる者の意から ) 妻をいう語。
      1. [初出の実例]「ヲヲそなたがかまのまへでこそ、いひたい我ままいはれふづれ」(出典:浄瑠璃・傾城八花形(1703)三)
  3. [ 二 ] ( 釜 )
    1. 飯をたいたり湯をわかしたりする金属製の用具。鍋よりも深く造り、普通は腰につばがある。まろがなえ。はがま。
      1. [初出の実例]「心も知らぬ人を宿し奉りて、かまばしも引き抜かれなば、いかにすべきぞ」(出典:更級日記(1059頃))
    2. 湯釜と茶釜との総称。湯釜は、銅製か鉄製だが、茶の湯に使う茶釜には、銀・金製などもある。標準形を真形(しんなり)といい、そのほか、茶釜百態といって種々な形のものがある。また、地紋の有無、所蔵者、製作者などによって多くの分類名がある。昔からいわれの深い茶釜のことを名物釜という。〔和漢三才図会(1712)〕
    3. ( 形が似ているところから ) カタツムリの殻。
      1. [初出の実例]「雨も風もふかぬは、でざ、かま打わらう」(出典:天理本狂言・蝸牛(室町末‐近世初))
    4. (しり)、または肛門異名。転じて、男色をもいう。
      1. [初出の実例]「門前の茶釜和尚の釜とでき」(出典:雑俳・柳多留‐八八(1825))
    5. ( [ 二 ]とその形が似ているところから ) 「かまがたぼう(釜形帽)」の略。
      1. [初出の実例]「拳骨(げんこつ)を裏側へ入れてうんと突ッ張ると釜の頭がぽかりと尖んがる」(出典:吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉六)
    6. ( 「地獄の釜」の略 ) 地獄でそれに入れて罪人を煮るという用具。
      1. [初出の実例]「飾った鍋を仕廻ふ翌(あ)す釜が明き」(出典:雑俳・柳多留‐五四(1811))
  4. [ 三 ] ( 窯 ) 陶磁器、ガラスや炭などを焼く装置。物質を高温度に加熱することによって、物質の融解、焼成などを行なう。かまど。また、特色のある陶磁器の生産場をいう。〔工学字彙(1886)〕
  5. [ 四 ] ( 罐・缶 ) 水などを加熱、蒸発させて高温・高圧蒸気とする、密閉した鋼板製の容器。蒸気機関を動かしたり、暖房を行なったりするのに用い、構造はその用途により異なる。ボイラー。〔物理学術語和英仏独対訳字書(1888)〕

く‐ど【竈突・竈】

  1. 〘 名詞 〙
  2. かまどの後方につけた煙出しの穴。〔新撰字鏡(898‐901頃)〕
    1. [初出の実例]「人の家の竈神のそばへ、別の戸をあけて、煙をいだす所を、くどとなづく」(出典:名語記(1275)五)
  3. かまど。へっつい。
    1. [初出の実例]「かまどと云はくい物をにる火だぞ。〈略〉いやしい者はへっついと云ぞ。くどとも云ぞ」(出典:詩学大成抄(1558‐70頃)一)
  4. いろり。炉。
    1. [初出の実例]「炉を まっこうぶちと云也。くどとも云なり」(出典:随筆・独寝(1724頃)下)
  5. 携帯できる炉。こんろ。七輪。
    1. [初出の実例]「茶をわかす小風炉のくどをのせ筆床のふでたて釣する道具ども」(出典:玉塵抄(1563)四四)
  6. 炉の上に設置されている、穀物などの乾燥用の棚。
    1. [初出の実例]「主は火棚(クド)に首の当らぬやうに炉ばたでと云ふ」(出典:秋山記行(1831)一)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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