最新 心理学事典 「発見学習」の解説
はっけんがくしゅう
発見学習
discovery learning
発見学習の基本的な過程は次のようなものである。⑴課題の把握 問題場面において,解決すべき課題を明確にとらえる段階。問題に接したとき,自分のもつ知識では理解できない,「なぜ」という問題意識がこの後の思考を推進する動機づけとなる。⑵仮説の設定 すでにわかっていること,知っていること,さらにはそこで得られた新たな情報に基づき,問題解決を予想し,仮説を設定する。⑶仮説の検証 仮説を,そこでの事実と照合しながら,論理的思考によりより洗練された仮説へと導いていく。⑷発展 こうして発見した法則や概念を適用して別の問題を解決する。
発見学習の長所として,以下のような点が挙げられる。まず,学習過程そのものにも特徴が現われているように,学習内容のみならず,考え方といった知的操作力の獲得もめざすものであるため,応用力,活用力が形成される。次に,学習を通して能動的に探究する態度が形成され,解決が得られるとその発見の喜びから,内発的動機づけを高めることができる。さらに,そのようにして獲得された知識の保持は高まり,かつ利用可能性が高まる。まさに,「自ら学ぶ力」を育成する学習法といえる。
これに対して,次に挙げるような短所や注意点があることも忘れてはならない。学習者自らが知識を生成していくため,学習に時間と労力を要する。高度な仮説設定や仮説検証の能力が学習者に必要である。つねに望ましい結果へ到達するとは限らない。学習内容についてある程度の知識がなければ学習できない。
発見学習は,学習者が主体的に学習を進めていくものであるが,授業の計画そのものは教師が立てるものである。そのため,教材の精選,構造化だけでなく,以下の点にも配慮し,入念な準備をしておかなければならない。まず,そこで学習する知識に対する興味・関心や,仮説を設定しそれを検証しながら知識を生成していくという学習活動そのものに対する興味・関心を喚起するように,学習課題の提示の仕方を工夫する必要がある。次に「自分も頑張れば発見できるはずだ」という発見学習に対する自己効力感を育成し,意欲的に発見学習に取り組むことができるようにしておくことも必要である。さらに,仮説設定や仮説検証の能力を高めておくことも必要である。そして,そこでの仮説設定や仮説検証において必要な知識を保有しているか否かを事前に把握し,知識の不十分な学習者に対しては知識を補うことが求められる。 →教授学習 →プログラム学習 →有意味受容学習
〔岡 直樹〕
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