童子教(読み)ドウジキョウ

デジタル大辞泉 「童子教」の意味・読み・例文・類語

どうじきょう〔ドウジケウ〕【童子教】

江戸時代寺子屋教科書として広く利用された教訓書。1巻。作者未詳。鎌倉後期の成立という。童子対象とした教訓を漢文体五言320句に記したもの。

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精選版 日本国語大辞典 「童子教」の意味・読み・例文・類語

どうじきょう ドウジケウ【童子教】

鎌倉末期から明治初年にかけて広く日本に行なわれていた初等教訓書。全一巻。僧安然の作といわれるが未詳。儒教思想・仏教思想をもとにした漢文体五言三二〇句からなる。江戸時代、寺子屋の教科書として著しく普及した。〔運歩色葉(1548)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「童子教」の意味・わかりやすい解説

童子教 (どうじきょう)

鎌倉末期から明治初期まで使用された教訓書。1377年(天授3・永和3)書写版が現存する最古のものである。選者は唐の白居易,天台密教の安然などの説があるが不明。仏教思想をもとにしつつ,仏教および儒教の経典から文を選び,漢詩流の五言330句に構成したもの。末尾に〈幼童を誘引せん為に,因果の道理を註す〉(原文漢文)とあり,行儀作法言行の戒め,師弟のあり方,父母への孝養,現世の無常,来世希求を,その内容とする。当初は仏門にある山住みの童子を対象として書かれたものであったと考えられる。江戸時代には,単独で,または《実語教》と合わせて刊行され,寺子屋の教科書として広く使用された。〈郷に入りては郷に随え〉〈人は死して名を留め,虎は死して皮を留む〉等,今日ある格言の多くが,本書により伝えられた。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「童子教」の意味・わかりやすい解説

童子教
どうじきょう

中世から近代初頭にかけて広く普及した初歩教科書。作者は不明で、鎌倉中期から末期に至る間の作と推定されている。体裁は漢文調の五言330句からなる。内容は、前半に儒教の格言を中心に行儀作法などの日常道徳を説き、後半は、初めに匡衡(きょうこう)らの刻苦勉励した例により勧学を鼓吹し、次に酉夢(ゆうぼう)らの例をあげて父母への孝養を強調している。そしてこれらの現世の善因によって来世往生という善果が得られるとして、因果の道理を教えている。室町初期にすでに流布していたが、近世に入り『実語教』と並んで、道徳教科書として著しい普及をみた。また、『新撰(しんせん)童子教』などの類書も輩出した。

[利根啓三郎]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「童子教」の意味・わかりやすい解説

童子教
どうじきょう

児童教訓書。平安時代の僧,安然著と伝えられる。著作年代未詳。1巻1冊。明暦4 (1658) 年刊。中世以降,童子の道徳教訓書として用いられた。これは,儒書から日常的な教訓を選び,仏書から因果応報の説話を説く全 330句から成るもの。特に近世には,『実語教』とともに寺子屋などで使用され,教育史上,大きな役割を果した。『続群書類従』『日本教育文庫』『国民思想叢書』などに所収。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「童子教」の解説

童子教
どうじきょう

鎌倉時代以降広く用いられた道徳教科書。撰者・成立ともに不詳。仏教的信仰とともに,日常生活の行儀作法・格言などを5字1句で記し,330句からなる。1377年(永和3・天授3)書写本が現存する最古のもの。近世に単独または「実語教」と合刻され流布した。「童子教注抄」など中世に数種の注釈書がある。「続群書類従」「日本教科書大系」所収。

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旺文社日本史事典 三訂版 「童子教」の解説

童子教
どうじきょう

室町初期〜明治初期に至るまで用いられた初等用教科書
1巻。鎌倉時代の作と推定される。作者は未詳。儒教中心の現世道徳を内容とする。

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