(読み)チ

デジタル大辞泉 「笞」の意味・読み・例文・類語

ち【笞】[漢字項目]

[音]チ(呉)(漢) [訓]むち しもと
むち。むち打つ。「笞刑笞杖ちじょう鞭笞べんち

ち【×笞】

刑罰に用いる、むち。しもと。
律の五刑のうち最も軽い刑。むちで打つもの。10打から50打までの五等がある。笞刑。笞罪

しもと【×笞/×楚】

しもとで作るところから》昔、罪人を打つのに用いたむち。比喩的に、人を責める厳しい戒め。「心をむちうつ―」

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精選版 日本国語大辞典 「笞」の意味・読み・例文・類語

ち【笞】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 令制で、刑罰に用いた道具一種。罪人などをたたいた木の若枝でつくったむち。しもと。
  3. 律で、五刑の一つ。むちで打つ刑で、最も軽い。日本では、律の五罪の一つ。打つ数により一〇から五〇まで、一〇ごとの五等級にわかれる。
    1. [初出の実例]「若畜産唐突、守衛不備。入宮門者。杖七十。衝仗衛者。笞五十」(出典:律(718)衛禁)
    2. [その他の文献]〔漢書‐刑法志〕

しもと【笞・楚】

  1. 〘 名詞 〙 ( 葼(しもと)を用いたところから ) 刑罰の具。木の若枝でつくったむち、または杖。また、それで打つ刑。すわえ。しもっと。
    1. [初出の実例]「楚(しもと)取る 里長(さとをさ)が声は」(出典:万葉集(8C後)五・八九二)

しもつ【笞】

  1. 〘 名詞 〙しもと(笞)
    1. [初出の実例]「鬼もおぢをののきて〈略〉打出の小槌、杖、しもつ、何にいたるまでうち捨(すて)て」(出典:御伽草子一寸法師(室町末))

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普及版 字通 「笞」の読み・字形・画数・意味


11画

[字音]
[字訓] むち・たたく・せめる

[説文解字]

[字形] 形声
声符は台(たい)。台に治(ち)の声がある。〔説文〕五上に「つなり」とあり、刑罰の一に笞杖を用いるものがあり、笞刑という。鞭を用いるので「鞭笞(べんち)」ともいい、また労役刑であるので「徒刑(づけい)」ともいう。

[訓義]
1. むち、むちうつ。
2. たたく、刑罰としてむちを用いる。
3. せめる、罪状をせめて白状させる。

[古辞書の訓]
和名抄〕笞 令に云ふ、笞(杖)。大頭二、小頭一。之毛度(しもと) 〔名義抄〕笞 シモト・ササク・ウツ 〔字鏡集〕笞 ハコ・ウツ・シモト・ササク・フリコ

[熟語]
笞刑・笞撃笞詬・笞・笞罪・笞殺笞叱・笞杖笞辱笞捶・笞責笞撻笞臀笞怒笞督笞罵・笞背・笞罰笞鞭・笞墓・笞法・笞・笞撲・笞掠
[下接語]
捶笞・撻笞・怒笞・督笞・鞭笞・笞・掠笞

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「笞」の解説


笞罪・笞刑とも。律の五罪のうち最も軽いもの。節を削った杖で体を打つ刑罰。笞10から笞50までの五等がある。笞罪に用いる杖(笞杖)は長さ3尺5寸(約105cm),手もとの直径3分(約9mm),先の直径2分(約6mm)で,これで臀部を打つことになっていた。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「笞」の意味・わかりやすい解説


律の5刑のうち,最も軽い刑。木の小枝で尻を打つ刑で,10から 50まで,10をもって1等に数え,5等級とした。明治初年の刑法典である『仮刑律』『新律綱領』においても正刑の一つとして採用された。しかし明治5 (1872) 年それに代り懲役刑が行われることとなった。

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旺文社日本史事典 三訂版 「笞」の解説


律令刑罰の一つ。➡ 五刑

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【刑具】より

…身体刑の刑具は,刀剣類のほか烙印(らくいん),入墨具など肉体をそこなわしめるものと,鞭や棍棒など打撃によって痛苦を与えるものとに分けられる。中国律の笞(ち),杖(じよう)は後者の例である。自由刑では手錠(手鎖(てじよう)),枷(かせ)が代表的であり,これらは戒具としても使用される。…

【刑罰】より

…18世紀の絶対主義国家に至るまで,死刑とともに刑罰制度の中心をなしていた身体刑すなわち身体を傷つける刑罰は,現在では文明国からほとんどその姿を消した。身体刑は,たとえば手や足を切る刑,笞刑(ちけい)(身体を笞(むち)で打つ刑)などであり,日本でも笞刑は明治初年まで存在した。 日本近代以後の刑罰を歴史的にみると,そこには,身体刑に代えて自由刑・財産刑を刑罰制度の中心とし,その自由刑をも単純化していくという一般的な刑罰史の流れに沿っている。…

【中国法】より

…さらに法制の背景をなす社会構造も根本から異なっているので,もし律令という名を共通にするという理由で,両者の社会を等質とみなそうとするならば,大きな過誤に陥るおそれがある。律令格式 唐律に定める刑罰に五等あり,これを五刑と称するが古代の肉刑の五等とは異なり,笞・杖・徒・流・死をいう。笞も杖も背を鞭打つ刑であるが,竹または木をもってつくり,笞は細く杖は太い。…

【刑具】より

…身体刑の刑具は,刀剣類のほか烙印(らくいん),入墨具など肉体をそこなわしめるものと,鞭や棍棒など打撃によって痛苦を与えるものとに分けられる。中国律の笞(ち),杖(じよう)は後者の例である。自由刑では手錠(手鎖(てじよう)),枷(かせ)が代表的であり,これらは戒具としても使用される。…

【杖罪】より

…律の五刑の一つで,笞罪(ちざい)と同じく木の枝をもって臀部を打つ刑罰。60より100までの5等がある。…

【笞罪】より

杖罪と同じく木の枝をもって臀部を打つ刑罰。笞罪の執行に用いるむちは笞杖といい,手もとの直径3分(約9mm),先の直径2分(約6mm)で,杖罪に用いる常行杖よりも1分ずつ細い。長さは常行杖と同じく3尺5寸(約105cm)で,打ったときに受刑者の皮膚が破れて出血しないように,節目を削り取ってある。…

※「笞」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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