里長(読み)サトオサ

デジタル大辞泉 「里長」の意味・読み・例文・類語

さと‐おさ〔‐をさ〕【里長】

里の長。律令制里長りちょう郷長ごうちょう近世名主なぬし庄屋しょうや村長むらおさなど。

り‐ちょう〔‐チヤウ〕【里長】

律令制下の地方行政区画の最小単位である里の長。郡司の監督下に里内統制徴税にあたり、雑徭ぞうようを免ぜられた。さとおさ。

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精選版 日本国語大辞典 「里長」の意味・読み・例文・類語

さと‐おさ‥をさ【里長・郷長】

  1. 〘 名詞 〙 村落首長。法制上は律令の国郡里制下の里長(りちょう)、郷里制下の郷長(ごうちょう)および里正(りせい)を指すが、後代に至っても広く用いられ、江戸時代名主(なぬし)庄屋(しょうや)等の異称ともなった。村長(むらおさ)。里の長(おさ)。里の刀禰(とね)
    1. [初出の実例]「楚(しもと)取る 五十戸良(さとをさ)が声は 寝屋戸(ねやど)まで 来立ち呼ばひぬ」(出典:万葉集(8C後)五・八九二)

り‐ちょう‥チャウ【里長】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 令制で地方行政区画の最下級の単位である里(五〇戸)の長。現地の農民のうちの有力者を任命し、里内の秩序維持、勧農、警察などを行なった。〔令義解(718)〕
  3. 村落の長。
    1. [初出の実例]「田舎の里長(〈注〉ナヌシ)も、必学問吾如き者有ん」(出典:江戸繁昌記(1832‐36)二)

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百科事典マイペディア 「里長」の意味・わかりやすい解説

里長【さとおさ】

古代日本において郡の下に置かれた里(郷)のおさ。〈りちょう〉とも読み,また〈郷長〉と書き,〈ごうちょう〉とも読む。官人には属さないが,律令制下の地方行政機構の最末端に位置した。戸令によれば,50戸をもって里とし,里ごとに長1人を置いた。里長は白丁課役を出す無位の正丁)から任命され,郡司の下で戸口を検し,賦課催促などを任務とし,(よう)・雑徭(ぞうよう)が免除されていた。活躍は11世紀初頭ごろまでで,以降に消滅

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「里長」の解説

里長
りちょう

「さとおさ」とも。律令制下,地方行政組織の末端にあった50戸からなる里の長。その里の白丁(はくてい)で清正強幹の者から選ばれ,徭役(ようえき)が免除された。令の規定では里内の戸口の把握,農業の奨励,治安維持,徴税などを職掌とし,租税免除などを命じた詔勅を里内の民に周知するよう定められた。「貧窮問答歌」に描かれた苛酷な徴税吏が知られるが,実態は郡司のもとで雑務に従う者で,範とした唐の里正にくらべて職権は低かった。静岡県伊場遺跡出土の木簡にみえる「五十戸造」は,7世紀後半の里長の前身である可能性があり,717年(養老元)の郷里制施行以後は郷長(ごうちょう)となった。


里長
さとおさ

里長(りちょう)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「里長」の意味・わかりやすい解説

里長(りちょう)
りちょう

古代律令(りつりょう)制下の地方行政区画の単位である里の長。「さとおさ」とも読む。律令の規定には、白丁(はくてい)(無位無官の良民)のなかから清正強幹な者をあて、戸口の検察、農桑の課殖、非違の禁察、賦役の催駈(さいく)を職掌とするとあり、『万葉集』には、「楚(しもと)(笞)取る五十戸良(さとおさ)」(892)、課役を徴収する「五十戸長(さとおさ)」(3847)がみられる。715年(霊亀1)の郷里制施行によって、里長は郷長とされ、その下に里正(りせい)が置かれた。

[大町 健]


里長(さとおさ)
さとおさ

里長

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「里長」の意味・わかりやすい解説

里長
りちょう

『万葉集』には「さとおさ」とある。律令行政単位里 (50戸1里) の長。ごとに1人おかれ,徭役を免除され,八位以下の請願者および白丁 (はくてい) の清廉強幹な者が採用された。郡司のもとにあって,戸口の検校,農桑の課殖,非違の禁察,夫役の催促などにあたった。

里長
さとおさ

里長」のページをご覧ください。

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旺文社日本史事典 三訂版 「里長」の解説

里長
りちょう

律令制における地方行政組織の里 (り) の支配者
「さとおさ」とも読む。現地の有力農民から清廉強幹の者が選任された。里内の戸口を検し,農業奨励・課役の催促などにあたった。庸・雑徭は免除された。のち郷里制で郷長と改名された。

里長
さとおさ

りちょう

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改訂新版 世界大百科事典 「里長」の意味・わかりやすい解説

里長 (りちょう)

郷長(ごうちょう)

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普及版 字通 「里長」の読み・字形・画数・意味

【里長】りちよう

里正。

字通「里」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の里長の言及

【郷長】より

…715年(霊亀1),式により里は郷と改称された。それにともない里長もまた郷長と改められた。里=郷は50戸よりなることから,〈五十戸長〉と書いて〈さとおさ〉とする例があり,また7世紀末と思われる事例では〈五十戸造〉の姓を有する者がある。…

【郷司】より

…平安中・後期以降中世にみられる地方官。律令制下の郷(もと里)には郷長(もと里長)がおかれていたが,律令制の弛緩にともなってその地位はしだいに低下し,10世紀にはほとんど消滅した。これにかわって登場してくるのが郷司であるといっても大過はないが,当時と呼ばれたものの実態はさまざまなので,その系譜や規模を考慮し,郷司もさしあたり三つの類型に分けてみる必要がある。…

【郷長】より

…715年(霊亀1),式により里は郷と改称された。それにともない里長もまた郷長と改められた。里=郷は50戸よりなることから,〈五十戸長〉と書いて〈さとおさ〉とする例があり,また7世紀末と思われる事例では〈五十戸造〉の姓を有する者がある。…

【徴税請負】より

…【佐藤 次高】
【中国】
 中国では徴税請負が公式な制度となったことはない。近世を例にとった場合,政府は行政の末端として組織した村落機構の役員である里正あるいは里長,また租税徴納のために任命された明代の糧長などに徴税の責任を負わせ,彼らも定められた税額を確保するために手段を尽くし,ときには税額以上のものを徴収して私腹に入れることもあったから,これを徴税請負とみなす見解もある(里甲制)。しかし里正らは徴税の仕事を通じて利益を得ることを認められているわけではなく,逆に税額確保のためには個人的損失をともなうことの方が多かったと考えられる。…

【明】より

…戸数110戸を基準として里を組織する。そのうち経済的に有力な10戸を里長戸として,1年交替で里長の役に当たらせる。残る100戸を10甲に分け,甲ごとに1年交替で甲首の役に当たらせる。…

【里甲制】より

…そしてこれらの制度を整備,画一化して1381年(洪武14)全国的に実施されたのが賦役黄冊の編造と里甲制の制定であった。この制度は徭役負担の義務をもつ110戸を基準として1里を編成し,丁糧の多い富裕戸10戸を里長戸,残りの100戸を甲首戸とし,これを10戸ずつ10甲に分けた。そして里長1人,甲首10人が毎年輪番でその里のさまざまの役に当たり10年で1周した。…

※「里長」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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