指や膝の関節内で炎症が起き、骨に痛みや変形が生じる疾患。貧血や微熱が伴うこともあり、初期には関節の腫れやこわばりが現れる。重症化すると軟骨や骨が破壊され、日常生活の動作に支障が出る。発症には遺伝や細菌感染などが関わっているとされるが、詳しい原因は不明。薬剤による治療などがある。決め手となる予防法は開発されていない。
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出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報
多発性関節炎を主徴とし、進行すれば関節の亜脱臼(だっきゅう)や強直なども生じ、同時に種々の全身症状も伴う疾患。日本では1962年(昭和37)「慢性関節リウマチ」と訳され、呼称として長く用いられたが、その後、病態解明が進み、「慢性」の語が適当でないとして2002年(平成14)診断名を「関節リウマチ」と変更した。
[高橋昭三]
原因は明らかでないが、免疫グロブリンの一つであるIgGに対する自己抗体であるリウマチ因子が高率(約80%)にみいだされ、そのほか種々の免疫的異常が認められるので、自己免疫疾患の一つと考えられている。免疫異常のきっかけとなるものとして古くから感染が想定されているが、特定の感染微生物は発見されていない。患者の血縁者にはこの病気の頻度が高く、遺伝的素因が発病に関与していると考えられる。肉体的・精神的な疲労、住居の湿潤、寒冷、感染、外傷などが発病の誘因としてあげられる。女性に多く(男性の3、4倍)、とくに30~50歳代によくみられる。
[高橋昭三]
一般に徐々に発病するが、一部には発熱を伴い急性に発症するものもある。関節症状が現れる前に、疲れやすさ、食欲不振、手足のしびれ感、一過性の筋肉や関節の痛み・こわばりなどの前駆症状が認められることもある。関節炎は本症に必発であり、多発性、左右対称性、慢性かつ進行性であるのが特徴である。初発関節は、欧米では手指、手、足、足趾(そくし)(足指)関節が多いとされているが、日本では生活様式の関係か、膝(しつ)関節から始まることも少なくない。関節の炎症は滑膜の炎症から始まり、しだいに関節軟骨や骨も破壊されるようになる。したがって初期には滑膜の増殖、関節包(嚢(のう))の肥厚、関節液の貯留により腫脹(しゅちょう)や熱感を生ずるが、X線検査では関節にほとんど変化は認められない。
本症では、指先から数えて第二の関節(近位指節関節)と第三の関節(中手指節関節)が侵されやすいが、第一の関節(遠位指節関節)だけが最初から侵されることはない。遠位指節関節を侵しやすいのは、変形性関節症である。近位指節関節の腫脹は、特有な紡錘形を示す。病変が進行すると、関節の破壊や筋の萎縮(いしゅく)、拘縮(こうしゅく)に、腱(けん)や靭帯(じんたい)の変位、断裂などが加わり、本症に特有な種々の変形が現れる。この関節症状以外によくみられるのは、疲れやすさ、食欲不振、体重減少、貧血などである。微熱が認められることもある。頻度は少ないが本症に特有なものに皮下結節がある。これは皮下のぐりぐりした塊で、関節付近の伸側にできやすい。普通、圧痛はない。
[高橋昭三]
次に述べる11項目の臨床症状と検査項目の組合せからなる診断と、その条件を満たしていても本症でないこともあるので、診断から除外する項目を設けたアメリカ・リウマチ協会の診断基準が用いられる。おもな除外項目は、本症以外の膠原(こうげん)病や痛風、感染性関節炎などの特徴とされる症状や検査所見である。
(1)朝のこわばり、すなわち朝の覚醒(かくせい)時に関節を動かすときに感ずる動かしにくい「こわばり感」をいう。
(2)少なくとも一つの関節の運動痛か圧痛がある。
(3)少なくとも一つの関節の腫脹がある。
(4)少なくとももう一つ他の関節にも腫脹がある。
(5)関節腫脹に左右対称性がみられる。
(6)皮下結節がある。
(7)関節の典型的X線写真像が得られる。
(8)リウマチ因子が認められる。
(9)関節液ムチンの減少がみられる。
(10)関節滑膜に特徴的な組織学的変化が認められる。
(11)皮下結節に特徴的な組織学的変化が認められる。
以上のうち、5項目以上があり除外項目がなければ、関節リウマチと診断してよいとされる。
[高橋昭三]
約35%は1、2年の経過で治癒ないし軽快し、約15%は進行がとどまることなく高度の身体障害者となり、両者の中間で増悪と寛解を繰り返しながら全体としてはすこしずつ悪化するものが約50%である。生命の予後は悪くなく、本症自体で死亡するものは悪性関節リウマチを除けば少ない。
[高橋昭三]
適度の安静と適度の運動(関節の伸展・屈曲を最大限に行う)ならびにビタミン、ミネラル、タンパク質の豊富な食事などからなる基礎療法に加え、消炎・鎮痛作用のある非ステロイド性抗炎症剤を用いるのが原則である。これで症状がコントロールできない場合には金剤やD-ペニシラミンが用いられる。これでもだめな場合には免疫抑制剤が使われることもある。ステロイド剤はやむをえない場合のみ少量(できるだけ1日1錠まで)を使用する。炎症症状が2、3の関節に限局して強いときには、ステロイド剤の関節注入も行われる。関節機能障害の予防および治療には、各種の理学療法を含めたリハビリテーションも必要である。なお、関節機能障害が高度な場合には、機能回復のため関節形成術(人工関節)など種々の手術が行われる。
[高橋昭三]
本症に関連した2、3のおもな疾患について簡単に述べる。
[高橋昭三]
関節リウマチに血管炎症状を伴ったものをいい、特定疾患(難病)に指定されている。高熱をはじめとして全身のいろいろな臓器障害が現れる。すなわち、多発性神経炎、皮膚の梗塞(こうそく)または潰瘍(かいよう)、指趾壊疽(ししえそ)、上強膜炎、滲出(しんしゅつ)性胸膜炎、心嚢(しんのう)炎、心筋炎、肺臓炎などで、治療にはステロイド剤、D-ペニシラミンが用いられる。
[高橋昭三]
小児期(15歳以下)に発症した関節リウマチをいうが、成人のものと同一疾患か否かは不明であり、少なくとも臨床面からは異なるところが多い。発病時の症状から全身型(急性熱性型)、多関節型、少関節型(または単関節型)の3型に分けられるが、全身型はスティル病ともよばれている。
[高橋昭三]
関節リウマチに脾腫(ひしゅ)と白血球減少を伴うものをいう。
[高橋昭三]
リウマチ性疾患の一つで,関節炎があちこちの関節におこり,進行して慢性化するため,慢性関節リウマチrheumatoid arthritis,または多発性関節リウマチとも呼ばれる。運動器の中心である関節のほか,約25%の患者には,皮下組織,腱鞘,筋肉,肺,脾臓,リンパ節,心臓,血管,眼など,関節外の組織にもリウマチ性の炎症がみられる。したがって全身病と考えられている。しかし,あくまでも関節炎がこの病気の主要な症状である。
原因は不明であるが,ウイルス,細菌などによる感染,先天性素因や内分泌障害が有力視されている。免疫学的研究によると,慢性関節リウマチにかかっている人の血清中の変性免疫グロブリンが抗原となって,抗免疫グロブリン抗体ができることが明らかにされている。これは主としてIgM抗体であるが,リウマチ因子と呼ばれている。このリウマチ因子が補体と結合して免疫複合体を形成し,関節炎の引金になり,さらに関節の軟骨に沈着するため慢性関節炎が持続するといわれる。なぜこのようなリウマチ因子がつくられるかは明らかにされていないが,約75%のリウマチ患者のほか正常人の血清にもみられる場合がある。
慢性関節リウマチの関節炎は,関節包の内張りにあたる滑膜に初発し,しだいに関節液がたまる。ここでもリウマチ因子が産生されて慢性化の原因となる。進行すると軟骨が侵食されて破壊される。このため骨が露出すると関節はぐらぐらになって安定性を失う。やがて関節運動が障害されて不動となって相対する関節端の骨が癒合してくる。これを骨性強直と呼んでいる。
中年以降の40~50歳の女性に多い。大多数の人では,両側の手指で近位指節間関節に紡錘状のはれと痛みがおこり,炎症は中手指関節および手関節に進む。続いて大関節では,ひざ,ひじ,足関節にはれと痛みがおこる。一度に複数の関節炎がおこるのが特徴である。慢性化したものでは,関節の運動障害が強くなり,特徴的なリウマチ変形をおこす。すなわち,上肢では,ひじが伸びなくなり,手指はボタン穴swan neck変形をおこし,物を握ったりすることが不自由になる。下肢では,関節が変形したり不安定になるため歩行しがたい。足指の変形で〈まめ〉や〈たこ〉ができて履物がはけなくなる。そのほか,股関節,肩関節,頸椎にも関節炎がみられるが,全体の10%以下の罹患率である。
診断にはよくアメリカ・リウマチ協会の基準が利用されている。これは次の11項目からなっている。
(1)少なくとも6週間〈朝のこわばり〉が続く。(2)少なくとも6週間〈1関節以上の関節痛または圧痛〉が続く。(3)少なくとも6週間〈1関節の腫張〉が続く。(4)少なくとも3ヵ月以内に〈他の関節腫張〉が現れる。(5)少なくとも6週間〈両側性または対称性に中手指関節,近位指節間関節,中足趾節関節腫張〉が続く。(6)皮下結節の存在。(7)レントゲン写真での骨の脱灰像。(8)リウマチ因子の陽性。(9)滑液(関節液)ムチン沈殿物の減少。(10)滑膜炎の特徴的病理所見。(11)リウマチ結節の特徴的組織変化。このうち,7項目以上あればまちがいなく慢性関節リウマチであり,5項目以上であれば確定的とされる。3項目以下では慢性関節リウマチとはいえず,他の関節炎と鑑別せねばならない。
関節の痛みが強く,腫張のある場合には安静が必要である。しかし,痛みや腫張が軽減すればできるだけ臥床を避け,運動機能の障害を予防する。温熱療法によって関節の鎮痛と筋緊張を和らげるが,これにはパラフィン浴,鉱泥,温泉浴および家庭でのホットパックがある。運動療法ではリウマチ体操によって1日数回全関節の全運動を行う。
原因不明ではあるが,関節炎の発症メカニズム(仕組み)が明確になってきたため,薬物治療によって症状を緩和させ,運動障害や変形も防止することができるようになってきたので,日常生活や職業復帰も可能である。多くの抗リウマチ薬および抗炎症剤がある。昔からのアスピリン製剤は,副作用が少なく今でも長期間の基礎療法として投薬されている。現在のリウマチ治療薬のうち,欧米や日本で最も副作用が少なくよく使用されるものは金製剤である。1~2週間隔で1回量10~50mgを症状に応じて注射する。効果の出るまで3ヵ月間を要するが,関節炎の再燃,反復を抑制するのに安定した効果がある。副腎皮質ホルモン製剤は強力な抗炎症剤ではあるが,副作用のため,重症のリウマチの治療にのみ使用される。長期間連用したり,大量に使用することは避けるが,関節炎が他の抗リウマチ薬を投与しても2~3の関節の痛みと腫張がなくならない場合には局所用の関節腔内注射が行われる。そのほか,インドメタシンの内服と座薬が症状のコントロールに効果があり,副作用が少ない。
整形外科的治療は,局所関節の変形と運動障害に対して行われる。保存的療法として,変形予防の装具,特殊靴,車いすなどが使用される。薬物治療を続けても関節の痛みと腫張が6ヵ月以上続く場合,関節包の内層である滑膜を切除すれば関節炎は消退するので,ときに行われる。もしも変形と運動障害がおこって固定したものになると,保存的治療では効果がない。
関節の破壊が強くなると痛みはいっそう強くなり,日常生活に著しい支障がおこってくる。この場合には関節の再建手術として人工関節置換術が優れている。股関節と膝関節に最もよく行われる。この手術後には痛みは100%近く消える。関節の運動範囲も正常の2/3まで回復するのが普通である。
慢性関節リウマチにかかると,その20%は障害を残さず治癒するが,約半数の患者の関節炎は進行し変形を生じ,10%の患者は将来身体障害者になるといわれている。しかし,原因不明でも関節炎の組立機構が明らかになってきたので,この病気で死亡することはない。関節の働きを保つためには,症状の進行を抑制し関節の破壊を予防し,炎症の鎮静化をまつことが必要である。
→リウマチ
執筆者:広畑 和志
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