籠・隠(読み)こもり

精選版 日本国語大辞典の解説

こもり【籠・隠】

〘名〙 (動詞「こもる(籠)」の連用形の名詞化)
① 中にはいって出ないでいること。人知れず隠れしのぶこと。「冬ごもり」「巣ごもり」「山ごもり」「こもりぬ(隠沼)」など他の語と複合して用いることが多い。
※万葉(8C後)一一・二七〇〇「玉かぎる石垣淵の隠(こもり)には伏して死ぬとも汝(な)が名は告(の)らじ」
② 神社や寺院に泊まって祈念すること。参籠。
※平家(13C前)一二「正月の程は長谷寺に御こもりと聞こえ候しが」
③ (晦日) 月の末日。みそか。つごもり。〔物類称呼(1775)〕

こも・る【籠・隠】

〘自ラ五(四)〙
① 中にはいって、出ないでいる。家や部屋などにとじこもる。
※万葉(8C後)二〇・四四三九「松が枝の地(つち)につくまで降る雪を見ずてや妹が許母里(コモリ)(を)るらむ」
※尋常小学読本(1887)〈文部省〉三「かひこは、此巣の中にこもりて、凡そ十三日間眠るものなり」
② 人目につかないようにはいって、隠れる。
※書紀(720)舒明即位前・歌謡「畝傍山 木立薄けど 頼みかも 毛津の若子(わくご)の 虚茂邏(コモラ)せりけむ」
③ 神社、寺院などにとまって祈念する。参籠(さんろう)する。
※蜻蛉(974頃)中「ながき精進もはじめたる人、山寺にこもれり」
④ 城などの中にはいって防ぎ守る。籠城(ろうじょう)する。
※平家(13C前)一二「湯浅権守宗重をたのんで、湯浅の城にぞこもられける」
⑤ 物の中に含まれて、ある。「力のこもった声」
※万葉(8C後)一九・四二八三「梅の花咲けるが中にふふめるは恋や許母礼(コモレ)る雪を待つとか」
※源氏(1001‐14頃)若菜下「うはへは人になびき、おいらかに見えながら、うちとけぬ気色したにこもりて」
※行人(1912‐13)〈夏目漱石〉兄「普通我々が口にする好い加減な挨拶よりも遙に誠の籠(コモ)った純粋のものぢゃなからうか」
⑥ 気体などが、中にいっぱいに満ちる。
※和英語林集成(初版)(1867)「ヘヤニ クウキガ komoru(コモル)
⑦ 音や声が内に閉じこめられ、はっきり聞こえない状態である。くぐもる。「口の中にこもった声」
※雑嚢(1914)〈桜井忠温〉二三「号令は烟の中から綿を隔てて聞くやうに、物に籠(コモ)って陰々と聞える」
[語誌]下二段他動詞「こむ」に対する自動詞。ものが遮蔽物に囲われて外部から見えない状態にあることをいう。類義語「かくる」が遮蔽物にさえぎられて、視野から消え去る動作をいうのとやや異なる。しかし、「観智院本名義抄」の「」「蟄」にコモル・カクルの両訓が見られ、「水戸本乙日本紀私記‐神代上」に「閉居 古毛利為太万布(コモリヰタマフ)加久礼以万須(カクレイマス)」とあることからすると、両語は意味的に近く用いられていたようである。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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