粟津湖底遺跡(読み)あわづこていいせき

日本歴史地名大系 「粟津湖底遺跡」の解説

粟津湖底遺跡
あわづこていいせき

高橋たかはし川により瀬田せた川河口部に形成された小さな沖積地上に立地し、現在は晴嵐せいらん一―二丁目地先の水深約二メートルの湖底。昭和二七年(一九五二)漁師の網に引っかかり縄文式土器が引上げられ初めて明らかになった。その時に実施した簡単な試掘調査により、石山いしやま貝塚などと同じく、セタシジミを主体とする淡水産貝塚であることが判明。のち昭和五五年・五七年に実施した遺跡の範囲確認を目的とした試掘調査で、より詳細なデータが収集された。貝層は三〇―五〇センチの厚さで堆積、東西約五〇メートル、南北約九五メートルの範囲に広がる。貝層内には縄文時代前期から中期にかけての土器(爪形文を主体とするもの、隆起線文・押捺文・刺突文を施すものなど)をはじめ、イノシシ、ホンシュウジカ、ツキノワグマカワウソスッポンイシガメ、コイ、フナナマズなどの獣魚骨、ドングリオニグルミトチヒシヒョウタンなどの植物が含まれ、貝はセタシジミが全体の約九〇パーセントを占める。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「粟津湖底遺跡」の意味・わかりやすい解説

粟津湖底遺跡
あわづこていいせき

滋賀県大津市,琵琶湖南端瀬田川への出口近くにある縄文時代中期を主にする湖底遺跡。 1990年,琵琶湖総合開発事業の工事に伴う事前調査として調査が行われた。シジミを主とする貝層と良好な遺存状態にあった植物層が交互に堆積するという,これまでに調査されたどの遺跡にもみられない状況が出現した。縄文時代の生活の具体的な様相を語ることのできるまれな遺跡である。貝層に残されている動物遺存体と植物層に残っている植物遺存体の分析が完了すれば,季節ごとの生活の実態が明らかになると期待されている。

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