紙製の男女一対の雛人形。古い信仰に根ざしたおもかげをもっており、神雛ともいう。平安時代から、白紙でつくられた紙雛が祓(はらえ)行事に用いられ、神社ではこれを形代(かたしろ)または守り雛などとよんでいる。白紙をさらに赤、青色などの紙で玩具(がんぐ)化したものが、現在も守り雛(和歌山県加太淡島神社、宮崎県青島神社)あるいは流し雛(鳥取地方)として郷土玩具の形でみられる。また平安時代に「ひいな」とよぶ紙製の人形遊びがあったことも、紙雛の源流にあげられる。これらがしだいに変化と技法を加えられて紙雛となり、江戸時代に入ると雛段に飾られるようになった。男女一対なので夫婦雛(みょうとびな)ともよばれ、男雛(おびな)は烏帽子(えぼし)に袴(はかま)姿で袖(そで)を広げ、女雛(めびな)は小袖を前にあわせた熨斗(のし)形につくられている。雛段に立てて飾ったので「立ち雛」ともいった。男雛の袴、女雛の帯は金紙、小袖は赤い紙や金紙に花模様などを描いたもので、江戸初期にはこの紙雛だけを2、3対飾った。内裏雛が流行してくると紙雛は衰えたが、明治のころまでは雛段に立てて飾った。この紙細工の手作り技法から、姉様などの紙人形も生まれて発達したものと思われる。
[斎藤良輔]
出典 日外アソシエーツ「歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典」歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典について 情報
…江戸中期から,女子の初節句を祝う行事となって,雛段に飾る雛人形の贈答も盛んになった。雛段がまだ一般化されない以前には,毛氈などの上に紙雛と内裏雛だけを並べるのがほとんどであったが,段飾が様式をととのえてくるにしたがい,江戸末期には雛段の最上段に内裏雛を置き,階下の段に付随する諸人形を飾った。雛人形はこの雛段に飾る人形の総称である。…
※「紙雛」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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