婦人の髪形を縮緬(ちりめん)紙でつくり、千代紙などの衣装を着せた紙人形。手足がなく目鼻も略したものがある。折り紙の技術を生かして日本髪の美しさを表現し、「後ろ姿」の美に重点を置いたものもある。鑑賞用の比較的高級な人形に対して、少女が日常のままごと遊びに使う手作りの人形として古くから親しまれた。
1815年(文化12)刊の『骨董(こっとう)集』は、平安時代にも紙や草でつくったこの種の人形遊びのあったことを指摘している。江戸時代には女の子の遊びとして普及した。年長の女性の手芸としても楽しまれ、家庭での手作りのほか幕末ごろからは商品としても売られるようになった。1853年(嘉永6)刊の『守貞漫稿(もりさだまんこう)』には、当時の姉様の作り方を記している。白紙を筆の軸に巻いて押し縮め、しわをつけ縮緬紙にして髷(まげ)をつくる。次に軸を抜いてこよりで輪に結び、これを鬢(びん)と髱(たぼ)にする。輪に通したこよりの結び目のところに、別の白紙を縦長に折って輪の内外にあて、下のほうを糸で結ぶ。この糸の結び目から上の部分で前髪を、下の部分で顔をつくると解説してある。江戸では顔に目鼻を描かないが、地方によっては顔を描いたもの、首人形だけで衣装のないものもある。材料も紙以外に布、草、きびがら、土、練り物、あるいはそれらを組み合わせてつくるものなど種類が多い。その呼び名も、京都で「おやまはん」、鳥取で「ばんばさま」、兵庫県地方で「ぼんちこ」、金沢で「たちこさん」、東北地方で「あねっこ」などさまざまである。
江戸時代、大奥の女中たちの間で紙人形作りが盛んになり、江戸、京都、大坂など大都会の姉様作りの技法が、しだいに全国の城下町にも伝えられていった。社寺の縁日の露店あるいは地方の玩具(がんぐ)店に郷土玩具としてみかけたものが、かつては全国で約80種もあったという。東京、横手(秋田県)、鳥取、松江(島根県)、宇土(熊本県)など各地産のものが知られているが、現在はさらに、折り紙の手法を用いた新しいポーズのものや、和紙を使いながら、体の一部を綿で膨らませたりした新型のものもみられる。
[斎藤良輔]
あねさま人形ともいう。婦人の髪形をまねて縮緬(ちりめん)紙で髷(まげ)をつくり,千代紙細工などの衣装を着せた紙人形。少女がままごと遊びなどに使う手遊び人形として古くから親しまれてきた。近世の《骨董集》は,平安時代に〈ひひな〉というこの種の人形遊びがあったことを指摘している。折紙の技術を生かし,日本髪の美に重点がおかれていて,手足がなく顔も省略したものがある。〈あねさま〉は花嫁や若い女性を親しんで呼ぶ言葉で,江戸時代に女の子の遊びとして普及し,また年長の女性の手芸にもなって家庭で作られた。《守貞漫稿》には〈白紙を筆の軸に巻いて押しちぢめ,しわをつけその半分ほどを開いて髷をつくる。軸を抜き,こよりを通して輪に結ぶ。これを鬢(びん)と髱(たぼ)にする。輪に通したこよりの結び目のところに別の白紙を縦長に折って輪の内外に当て下のほうを糸で結ぶ。この糸の結び目から上の部分で前髪を,下の部分で顔を作る〉と作り方を解説している。現在も郷土玩具として各地に見られ,その呼名も京都で〈おやまはん〉,鳥取の〈ばんばさま〉,東北地方の〈あねっこ〉などさまざまである。
執筆者:斎藤 良輔
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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…この生人形系統の人形は,のちに西洋系統のマネキンの進出するにいたるまで,デパートのマネキンに用いられた。(4)家庭子ども用人形 子どもの遊ぶ人形には,(a)姉様がある。女の子たちは,カモジグサや紙で人形の髪を結い,紙などで衣装を作ったりして遊んだ。…
※「姉様」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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