日本大百科全書(ニッポニカ) 「組織心理学」の意味・わかりやすい解説
組織心理学
そしきしんりがく
organizational psychology
比較的大規模で持続的、かつ内部構造の分化も顕著な社会集団の、社会心理学的側面を明らかにする研究分野。1960年ごろから、従来、経営学に任せられていたこの分野に心理学者が手をつけ始めた基本動機は、その前の20年間の小集団研究の限界に対する反省と、官庁・会社だけでなく諸領域における組織の肥大化が官僚制化の傾向をもたらしがちな傾向の由来を、解明しようとすることにある。組織のなかには、(1)軍隊・刑務所・強制収容所のように成員の自由度も大幅に制限されるのに、なんらかの強制力によって崩壊を免れているもの、(2)官庁・会社・経済主義の労働組合など、組織に対しなんらかの貢献をすることにより報酬を与えられるから皆が協力体制を保つもの、(3)宗教・政治的イデオロギーなどの規範によって存続するもの、の3種がある。各種の学界・協会などは、元来、同業者の利益を守る側面と、社会的役割に伴う規範の側面をもっている。平和な状態では(1)と(3)の比重が相対的に低くなり、(2)の比重が高くなる傾向にある。
社会学の立場からは、組織の成員に対する拘束力の強さが主題になるが、心理学の立場からは、各種成員(社長、中間管理職、専門職、平社員など)の勤労意欲(モラール)のあり方、およびこれと組織目標達成のための仕事ぶりとの関連が、もっとも重要な課題となる。今日では、モラールが組織目標達成の手段というよりも、2種の相互に独立な目標の一つとみられている。
[吉田正昭]
『A・エチオニ著、綿貫譲治訳『組織の社会学的分析』(1966・培風館)』