結晶における化学組成、化学結合、原子や分子の存在状態などを結晶構造との関連のうえで研究する化学の一分野。結晶構造の解析によって蓄積された実験結果に基づき、1926年にノルウェーの鉱物学者ゴルトシュミットは、イオン結晶におけるイオン半径の概念を確立し、1930年代にはアメリカのポーリングによって結晶構造・分子構造と化学結合との関係が示された。その後、金属、合金、ケイ酸塩、有機化合物についても研究が進められ、20世紀後半に至って酵素や核酸(DNA)などの生体関連物質の複雑な結晶構造の解析も行われるようになった。また、構造解析のみにとどまらず、結晶の光学的、電気的、磁気的、熱的性質と化学組成あるいは化学結合性との関連を調べる物性化学的研究への発展もみられている。
結晶化学の研究態度が物質指向的であるのに対し、化学組成と結晶形態あるいは結晶構造との関連を、結晶構造解析法の改良、開発を含めて理論的に扱う学問を化学結晶学とよぶこともある。しかし、両者の区別はかならずしも明確とはいえず、化学と結晶学の境界付近で、どちら側により近いかを示すものにすぎないともいえる。
[岩本振武 2015年7月21日]
結晶を研究対象とする化学の一分野.しかし,X線回折を利用して結晶内の原子配列が明らかにされ,物質の構造や化学結合の性質を研究する学問となった.結晶の関与する反応も構造と関連させて論じられる.したがって,現在では構造化学の一分野と考えられる.歴史的に構造化学が1分子の構造から出発したのに対して,結晶化学は分子内,分子間に限らず結晶内の原子配列から出発していることから,構造化学とは別に結晶化学という学問分野が区分けされた.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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