構造化学(読み)コウゾウカガク(その他表記)structural chemistry

デジタル大辞泉 「構造化学」の意味・読み・例文・類語

こうぞう‐かがく〔コウザウクワガク〕【構造化学】

物質の物理的、化学性質構造との関連研究する物理化学の一部門。分光学測定をはじめとして磁気的・電気的・熱的な測定、さらにはX線電子線中性子線などによる構造解析などの手段が用いられる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「構造化学」の意味・わかりやすい解説

構造化学
こうぞうかがく
structural chemistry

分子あるいは物質の物理的・化学的性質をそれらの構造に基づいて研究する物理化学の一分野

 分子およびその集合系の構造を完全に記述するためには、分子内の原子核の三次元的配置および電子分布だけではなく、分子の運動状態、電子状態のほか、電気的・磁気的な性質を明らかにする必要がある。構造化学に用いられるおもな実験手段は、分光学的測定、回折現象の測定、熱的測定、電気的・磁気的測定などがある。分光学的方法は、種々の波長をもつ電磁波の刺激を分子系に与えたとき、分子系の示す電磁波エネルギー吸収発光を測定し、解析する方法である。マイクロ波分光は分子の回転状態の、赤外線分光は分子の振動状態の、可視・紫外分光は電子状態の研究に用いられる。旋光分散の測定やメスバウアー効果もこの範疇(はんちゅう)に入る。回折現象の測定は、短波長の電磁波であるX線や電子線・中性子線が分子によって回折する現象を利用するもので、原子間距離の測定に用いられる。電気的測定には、誘電率の測定による双極子モーメントの決定や屈折率の測定があり、磁気的測定には磁化率の測定がある。また、電場・磁場をかけたうえで、電磁波の吸収を測定する複合的な方法もある。核磁気共鳴電子スピン共鳴、核四極子共鳴吸収などがこれに対応する。また強い電磁波を分子系に照射し、放出してくる電子のエネルギーを測定する電子スペクトル測定は1990年代後半からのトピックスである。構造化学の進歩は測定技術と大型電子計算機の進歩に支えられている。

[下沢 隆]

『伊丹俊夫・江川徹・井川駿一・飯田陽一・星野直美・河村純一・竹内浩著『物理化学基礎演習』(1992・三共出版)』『日本分析化学会編『入門分析化学シリーズ 機器分析1』(1995・朝倉書店)』『田中誠之・飯田芳男著『基礎化学選書7 機器分析』3訂版(1996・裳華房)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「構造化学」の意味・わかりやすい解説

構造化学
こうぞうかがく
structural chemistry

物理的手段により物質の構造を研究する化学の一分野。量子化学の研究と分光学的測定技術の進歩により,分子構造が精密に決められるようになった。核磁気共鳴電子スピン共鳴X線回折などの方法により,さらに正確な構造上の知見が得られ,有機化学,生化学に対しても大きな影響を与えている。 (→分子構造 )

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化学辞典 第2版 「構造化学」の解説

構造化学
コウゾウカガク
structural chemistry

分子,結晶,液体などの構造を対象とする物理化学の分野の総称.物理化学を二大別して,構造化学と反応化学とよぶこともある.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の構造化学の言及

【物理化学】より

… 物体を構成する原子,イオンあるいは分子の構造を解くために,多くの光学的手法(X線回折,電子線回折,中性子線回折,可視・紫外線分光,赤外線分光,マイクロ波分光など)や常磁性共鳴吸収,核磁気共鳴吸収などの物理的手法を駆使して,10-3Å(10-11cm)以上の精度でのÅ(10-8cm)単位の原子間距離や分子間距離を決めることができる。これを構造化学と呼び,物理化学のなかでは非常に大きな分野を占める。 一方,合成,分離,精製の進歩は物質の多様化を加速し,物理化学の研究対象を拡大している。…

※「構造化学」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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