家畜の維持状態を保つのに必要な飼料。家畜が成長,労役,乳・肉・卵などの生産をしないで,ただ生命を保つだけでも体物質は消耗する。家畜が食べる飼料の養分はまずこの消耗の補給にあてられる。そのとき,エネルギー,タンパク質,ミネラルおよびビタミンなどの消費と供給とが一致して,出納が平衡した状態が維持である。維持状態を保つために必要とされる以上に養分が与えられたとき,それは各種の生産活動に利用される。これが生産飼料である。家畜の種類・大きさなどによって維持に必要な養分量は異なり,また畜産物の種類ごとに生産に必要な養分量が異なるので,維持飼料と生産飼料は各家畜の種々の飼養条件下で決められている。維持に必要なエネルギーは,飼料を与えないで絶食状態においたときに発生するエネルギー量である基礎代謝量に,各種の環境条件下で生活するために必要となる運動に要するエネルギーを加えたものである。家畜を放牧すれば畜舎内で飼うよりも多くのエネルギーが維持のために必要となる。また環境温度の変化も維持に必要なエネルギーを変化させる。一方,家畜のからだを構成する組織は,維持状態においてもたえずその一部が損耗され,かつまたすばやく修復されている。したがって,これに見合うタンパク質,ミネラルおよびビタミンを補給しなければならない。タンパク質をまったく含まずエネルギーなど他の栄養素を十分含む飼料を給与したとき,糞中に排泄される代謝性糞窒素と尿中へ排泄される内因性尿窒素を合計し,さらに毛,皮膚,爪などとして失われる窒素を加えて,これに係数6.25をかけてタンパク質に換算したものが,タンパク質の維持量である。ミネラルとビタミンの維持要求量は少ないが,比較的要求量の多いカルシウムとリンについては,同様に内因性の排泄量を測定し,それに見合う量を維持のための要求量としている。
→飼料
執筆者:宮崎 昭
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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