緑内障の手術

六訂版 家庭医学大全科 「緑内障の手術」の解説

緑内障の手術
(眼の病気)

 薬物治療・レーザー治療で眼圧コントロールが困難な場合に手術治療が必要になります。緑内障の治療は視野視力障害の進行を防止し、生涯を通じて「見える」状態を維持することが目標です。現在、治療の中心は眼圧を下げることになりますが、薬物治療も手術治療も眼圧を下げる意味では同等です。手術によって治癒したり、その後の治療の必要がなくなるわけではないので注意が必要です。

 また、手術の選択は眼の状態だけで決まるわけではなく、年齢や全身状態、視野障害の進行、反対眼の状態、ライフスタイルなど、現在と将来を含めて個々の患者さんごとに異なってきます。

 近年の白内障(はくないしょう)手術の進歩に伴い、緑内障と白内障の手術を同時に行う同時手術が積極的に行われるようになりました。これにより、白内障を合併している高齢の患者さんで、眼圧下降と同時に視力の改善を得ることができるようになってきました。現在広く行われている代表的な手術は以下のとおりです。

線維柱帯切開術(せんいちゅうたいせっかいじゅつ)

 線維柱帯の一部を金属プローブで切開し、房水(ぼうすい)流出をよくすることで眼圧を下げる手術です。開放隅角(かいほうぐうかく)緑内障、水晶体嚢性(すいしょうたいのうせい)緑内障、先天緑内障がよい適応です。比較的安全な手術で術後の合併症も少ないですが、線維柱帯切除術と比較すると眼圧下降効果が弱いことが知られており、初期~中期の緑内障に適しています。

線維柱帯切除術

 現在最も広く行われている緑内障手術です。房水眼球の外へ導いて眼圧を下げる手術で、緑内障の病型を問わず眼圧下降効果が高いことが特徴です。近年、マイトマイシンCという薬を使うことで格段に手術効果が上がりました。原発開放隅角緑内障、正常眼圧緑内障、閉塞(へいそく)隅角緑内障、続発緑内障が適応となります。中期~末期の緑内障に適しています。

 まぶたの下にあたる部位に濾過胞(ろかほう)ブレブ)と呼ばれる房水をためる袋ができることから、生活面での制約があります。術後に濾過胞感染などの合併症の危険があるので、きちんと眼科を受診し、チェックすることが必要です。

虹彩切除術(こうさいせつじょじゅつ)

 急性閉塞隅角緑内障の発作時に、レーザー虹彩切開術が施行困難な場合に行われます。術後の治療方針はレーザー虹彩切開術の場合と同じです。

隅角癒着解離術(ぐうかくゆちゃくかいりじゅつ)

 閉塞隅角緑内障で虹彩が隅角を閉じてしまっているところを機械的にはがすことで房水の流れをよくし、眼圧を下げる手術です。レーザー虹彩切開術や虹彩切除術をしても眼圧下降が得られず、薬物治療でコントロールが困難な場合に適応となります。緑内障発作を起こしてからの期間が比較的短ければ有効な方法です。

 白内障手術と同時に行うと良好な結果が得られることが報告されています。発作からの期間が長い場合は、線維柱帯切除術が選択されます。

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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