緑化工(読み)りょっかこう

改訂新版 世界大百科事典 「緑化工」の意味・わかりやすい解説

緑化工 (りょっかこう)

植物を用い地表をおおうことにより,土壌浸食を防ぎ,環境を保全・改善し,景観の質を高め,さらに自然保護に役だつために行われる緑化技術または工法をいう。緑化工を必要とし,また実施される場所は,開発,災害などにより表面が裸地化した個所が多い。これを早く確実に緑化し,最終的には目標とする緑を完成することが目的である。施工場所は,歴史的にみて海岸砂地が古く,山腹堤防がこれに続き,現代は道路のり(法)面,埋立地,宅地造成地,採石地などに広がっている。

早期緑化工用と景観構成用に分けられる。前者は緑化困難地において,悪い環境に耐えて生育し,遷移によって目的とする植生をつくるための先駆植物的意味をもつもので,欧米の牧草中やせ地に耐える種類が使われる。レッドフェスクオオウシノケグサ),トールフェスクオニウシノケグサ)の品種ケンタッキー31フェスク,ウィーピングラブグラスがもっとも多く使われる。後者は自然保護,国土保全の見地から使用が望まれる郷土植物で,前者に比べて早期緑化用に不適当なものが多い。使用される種類として草本ではススキイタドリヨモギなど,木本ではヤシャブシヤマハギタニウツギなどがある。

緑化基礎工,植生工,保護管理工に大別される。緑化基礎工は緑化するための基礎として,植物の生育に適する地盤をつくるために行われる。その内容は土壌を安定させ,改良することが中心であるが,必要に応じて排水工,防風工なども加える。斜面では土壌の崩壊を防ぐために水路工,被覆工,段階工,編柵工,擁壁ようへき)工などが行われる。植生工は植物をその場所に発育させるために行われる。その方法は播種(はしゆ)工と植栽工に2分され,これらを能率的に確実にさらに経済的に行うために種々の方法が考えられている。播種工では種子,肥料,土に水を加えて機械で施工面に吹き付ける吹付工,多量の水を用いて機械で散布する散布工,種子,肥料などを紙や布などに付着させてマット状または帯状にしたものを施工面に張り付ける植生マット工,植生帯工,種子,肥料,土を細長い袋に詰めたものを施工面に溝を掘り張り付ける植生袋工,土やピートでつくった平盤の表面の凹部に種子を装着して施工面に張り付ける植生盤工などがあり,とくに斜面の緑化に効果が大きい。岩壁など硬い斜面にも,機械で小穴を点々とあけて,そこに土と肥料を入れて播種または植栽する植生穴工があり,また網を施工面に張った上に吹き付ける工法,吹付材料中に展着物質を入れて吹き付ける工法がある。植栽工は施工面の土壌状態が良好な場合に行われる。保護管理工は施工後の植物の健全な生育をはかる対策であり,施肥,防乾,防寒が主である。これは目的とする植生へ早く遷移させる方法でもある。道路のり面などでは冬枯れ期の防火対策などがある。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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