地震に対する既存の建物の強度や安全性、被害の大きさなどを判定すること。診断は、建物の形状、骨組、柱や壁の数・配置、地盤、経年劣化などを考慮して行う。日本では1981年(昭和56)に耐震基準が大きく変わり、現行の耐震基準は、大規模地震(震度6程度)がおきても建物が倒壊せず、中規模地震(震度5程度)では建物の損傷が軽微にとどまるよう求めている。このため耐震診断とは、1981年以前の旧基準で建てられた建物に対し、現行の耐震基準に沿って耐震性を調べることを意味する場合が多い。阪神・淡路大震災で倒壊した建物は、旧基準で建てられたものが多かったため、現行基準を満たしていない特定建築物(多数の人が利用する一定規模以上の建物や地震によって倒壊した場合、道路を閉塞させるおそれのある建築物)は耐震診断を受け、補強改修することが必要とされている。2013年(平成25)11月には改正耐震改修促進法が施行され、1981年以前に建てられた大規模建築物に対する耐震診断が義務化され、2015年末までに強度を調べて公表することになった。また、幹線道路沿いのビルなどに対しては、地方自治体の判断で診断を受けることを義務化することができるほか、マンションなどの住宅にも努力義務として耐震診断を受けるよう求めている。
耐震診断の方法には、建物が設計図通りに建てられているかどうかを目視診断する「予備調査」のほか、柱や壁の量などから建物の強度を診断する「一次診断」、一次診断に建物の粘り強さ(靭性(じんせい))を加味して精密に診断する「二次診断」、柱や壁のほか梁(はり)の受けるダメージも考慮してもっとも厳密に判定する「三次診断」がある。通常、耐震診断には時間と費用がかかるため、まず予備調査や簡易診断で耐震性を調べ、問題があった場合に精密な診断を行う。政府は耐震診断や耐震補強を促進するため、1995年(平成7)に耐震改修促進法を施行し、2013年からは耐震診断費用の2分の1を補助しているほか、税制上の優遇措置も講じている。また2013年4月時点で、全国の市区町村の約8割が耐震診断への補助制度を設けている。
[編集部]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
(松村秀一 東京大学教授 / 2007年)
(阿部勝征 東京大学教授 / 2007年)
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