月給制(読み)げっきゅうせい

改訂新版 世界大百科事典 「月給制」の意味・わかりやすい解説

月給制 (げっきゅうせい)

賃金計算形態のうち,1ヵ月何円というように月単位で計算し支給される基本給制度をいう。月給制は専門的知識や経験に基づく能力を要する計画・立案・管理などの仕事に,期待度と信頼度で支払う制度であって,現在の諸外国でも第2次大戦前の日本でも,職員層(ホワイトカラー)を対象に行われ,その賃金をとくに俸給・給料(サラリー。英語salaryの語源はラテン語のsal(塩)で,古代ローマで兵士が俸給として塩を支給されたことにちなむ)と呼ぶこともある。これに対して時給日給出来高給などは,短期間においてなされた仕事の結果に対して払われる給与の算定形態で,現業労働者(ブルーカラー)が対象となり,賃金・労賃(ウェイジwage)の名で払われる。第2次大戦後の日本では,労働組合による生活安定・身分制撤廃の要求と,経営側による技術変化・職務転換・高学歴高能力化の要請に基づく人事政策の必要とで,現業労働者にも月給制をとり入れることが主流となった。これは諸外国にも例が少なく,日本的労務管理の特徴となっている。これにより労使一体感,従業員相互の平等意識が高まって,危惧された出勤率低下や働く意欲減退はみられず,企業の発展に役立ったとされている。

 月給制は,もともとは欠勤しても減収にならない制度であるが,欠勤日数に応じて日割計算で額を差し引く月給日給制も月給制に含めることが多い。日給を基礎に計算して月1回支払う日給月給制も,月給制に含めることがある。
サラリーマン →賃金
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「月給制」の意味・わかりやすい解説

月給制
げっきゅうせい

賃金の支払形態の一つである時間賃金の一種で、月単位で支払う方式。この場合、賃金はその月の通常労働時間内の労働提供に対する反対給付とみなされるから、所定労働時間を超える時間外労働に対しては割増賃金が支払われる。月給制の場合、月ごとの給与が安定するため、生活保障の機能という点では優れており、労働組合の一般的要求となっている。しかし、企業の側からすれば作業能率低下などの欠陥があるため、通例、個人業績に対する奨励加給制度、賞与制度などが付加されて運用されている。遅刻、欠勤にかかわらず全額支給するものを「完全月給制」とよび、決められた月の賃金から欠勤などに応じて減額する場合は「日給月給制」とよばれる。

[横山寿一]

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百科事典マイペディア 「月給制」の意味・わかりやすい解説

月給制【げっきゅうせい】

賃金を月単位の労働に対して定める制度で,休日・欠勤など労働しない時間があっても賃金収入の減少がない。基本給を日額で算定し月間の実労働日数に応じて賃金収入が変動する日給制に対する。日本では職員は月給制,工員は日給制が通例であったが,戦時中に労働力疲弊対策として工員月給論が叫ばれ,さらに戦後労働運動の身分差撤廃の要求に応じて,生産労働者の月給制への移行が進んだ。→日給月給年俸制

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世界大百科事典(旧版)内の月給制の言及

【職制】より

… 戦後になると,経営民主化や職員・工員の身分差撤廃を求める労働組合運動の結果,職制秩序にみられる差別的身分制秩序が撤廃され,職位と職務の相違という職能区分による新たな職制秩序へと変革された。この結果,戦前は職員のみに適用されていた月給制が正規従業員全員に適用されるなど,戦前は職員のみを対象とした労務管理制度が,正規従業員全体へと拡大されることとなった。戦後の職制秩序は,戦前の身分と職位によるものから,職能と職位を基礎とするものへと変革されたが,学歴を職制の位階秩序の土台に置くという戦前の性格は,戦後に継承された(学歴別職能制)。…

※「月給制」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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