(読み)しょく

精選版 日本国語大辞典 「職」の意味・読み・例文・類語

しょく【職】

[1] 〘名〙
① 担当している務め。また、その地位。役目。職務。
※菅家文草(900頃)一・拝戸部侍郎聊書所懐呈田外史「聞説劇官戸部郎 人臣何簡職閑忙」
浄瑠璃伽羅先代萩(1785)九「貝田勘解由に職(ショク)をこへられ、我威勢を奪はれし其無念やむ時なく」 〔書経‐周官〕
② 生計をたてるための仕事。職業。また、勤め口。
※雲形本狂言・塗師平六(室町末‐近世初)「むかしは花うるし、今は年たちらういろの、うるしのばちもあたりたる、職(ショク)の有様さむげせよ」
③ 身についた技能。技術。
※説経節・さんせう太夫(与七郎正本)(1640頃)上「のふがないしょくがないとて、あしてのすぢをたちきって」
④ みつぎもの。貢物。〔史記‐叔孫通伝〕
※当道新式目(1692)当道濫觴之事「人王九十五代後醍醐天皇の御宇に当道皆座の座上を以て職役と名く。明石検校覚一其比の座上によりて、職と号して官位の事を執行ふ」
⑥ 「しょくにん(職人)」の略。
※雑俳・鼻あぶら(1782)「左り箸かまはぬ職の子」
[2] 〘語素〙 職業、仕事。また、それに従事している人。「管理職」「たたみ職」「名誉職

しき【職】

〘名〙 (「しき」は「職」の呉音)
① 令制で、八省に属した官司の一種。中宮職・春宮(とうぐう)職・大膳職左京職など。また、造営職・修理職など令外官にも「職」の字が使われている。
※続日本紀‐大宝元年(701)七月戊戌「太政官処分。造宮官准職。造大安薬師二寺官准寮」
※枕(10C終)八三「『しきへなむ参る。ことづけやある。いつかまゐる』などのたまふ」
③ 平安中・後期、郡司職・郷司職などの官職について、その職権と地位が抽象的に認識されたもの。官職の世襲化が進んで「相伝私領」と称され私財化した。
※三代格‐七・元慶七年(883)一二月二五日「頃年之例往々有件職
荘園制的職務をさす語。平安末以後、はじめは下司職・預所職など内実としては経済的収益権や在地での領主権などの私権を含む職務をさし、領家職本家職のように荘務の実際から離れた得分権をもさした。
⑤ 仕事。職分。
※新内・与話情浮名横櫛源氏店)(1868‐70頃か)「小本を読むのがいいしきで、結構な御身分」

そく【職】

〘名〙 (「そく」は「しょく」の直音表記) 官職。職務。しょく。つかさ。
※落窪(10C後)三「老いもて行くままに、衛府(ゑふ)づかさ堪へず。若う花やかなる若男のそくにてなん堪へたるとて」

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デジタル大辞泉 「職」の意味・読み・例文・類語

しょく【職】[漢字項目]

[音]ショク(漢) シキ(呉)
学習漢字]5年
〈ショク〉
本分として担当すべき役目や任務。「職員職掌職責職務汚職解職官職劇職辞職重職殉職神職聖職奉職役職要職名誉職
暮らしのためにする仕事。「職業職場しょくば求職座職失職就職定職転職内職無職
手先を使う仕事。「職工職人手職てしょく畳職たたみしょく
〈シキ〉律令制で、の下の役所の名。「修理職しゅりしき
[名のり]つね・もと・よし・より
[難読]有職ゆうそく

しょく【職】

担当する務め。また、その地位。職務。「会長のにつく」「管理
生活を支えるための仕事。職業。「を探す」「を失う」
身についた技術。技能。「手にをつける」→職として
[類語](1役職激職要職顕職名誉職閑職現職前職/(2職業仕事生業なりわい商売家業稼業ビジネス

しき【職】

律令官制で、の下、の上に位置する役所。中宮職大膳だいぜん京職摂津職など。
中世、職務に付随する権限をさす。本家職・領家職・下司職・作職・守護職地頭職など。
職曹司しきのぞうし」の略。
「―へなむ参る。ことづけやある」〈・八三〉

そく【職】

《「しょく」の直音表記》官職。職務。
「さやうの事しげき―には」〈・澪標〉

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改訂新版 世界大百科事典 「職」の意味・わかりやすい解説

職 (しき)

平安中期以降,職務的権能とそれに付随する収益権が世襲的私財化することによって成立した中世社会に特徴的な権益。律令官制には,中宮職,大膳職,京職,修理職という職の称をもつ官があり,省の下,寮・司などの上に位置した。しかし律令官制の変質過程で,10世紀には〈郡大領職〉〈少領職〉〈郡司之職〉など,郡司の地位を〈職〉の称を付けて表すことが行われるようになり,さらに11世紀では国司の補任状でも〈郡司職〉と表す例が出現する。その場合,郡司の地位は相伝の権利・財産化して譲与の対象ともされていることから見て,職は官職であるとともに私財的性格を色濃く備えていることがわかる。さらに11世紀から12世紀にかけて荘園公領制が展開すると,荘園では本家職,領家職,預所職,下司職など,公領でも郷司職,保司職などのようにひろく職の称をもって,領主的諸階層の地位・権利を表すようになった。この場合も,それらの職は,荘園公領支配の体制上の地位・職務であるとともに,それが一面ではその職の保有者の私的財産的性格を備えて譲与の対象とされており,さきの郡司職の場合と共通の性質を備えている。その意味で,荘園公領制下の職は職務上の地位であるとともに領主財産・権益という二重の性格をもつといえる。中田薫の研究に代表される法制史学の側からは職を不動産物権として,純粋に権益的性格のものと見る傾向が強いが,職務・支配体制上の地位という側面も無視するわけにいかない。またこのころ山預職,絵所職など職能を示す職の用例も少なくないことから,職の本質を職能と見る考え方もあるが,これも職の一面をとらえたものというべきであろう。

 11~12世紀を通じて,寄進地系荘園が全国的に展開し,それらが国家の公的な承認のもとにおかれると,荘園・公領のいずれにおいても,その支配・領有権上下に重層した職によって構成され,中央貴族・社寺・在地領主いずれもがその地位・権利を職として表現するようになり,荘園公領制は職の重層的秩序体系として,究極的には国家的に保障されるようになった。1人の貴族が全国に分散した本家職や領家職を保持して,その権利を維持できたのも,彼ら独自の軍事的実力や管理努力のみによるのではなく,むしろ国家の裁判や国衙を介した強制力に依存するところが大きかったのであり,そこに荘園公領制下の職の秩序が国家的に維持されていた側面がよく示されている。

 しかしこのような職の上下補任関係は封建的主従制による知行宛行(あておこない)関係とは性質が異なっていた。下司職のような下位の職に補任された者は,上位者に対して,その職務を忠実に履行する義務は負うが,それは封建的従者となったことを意味せず,したがって上位者に対し軍役奉仕義務を賦課されることはなく,またその上位者とは別人と封建的主従関係を結ぶこともありえた。ただ鎌倉幕府の成立とともに新たに源頼朝の申請により設置が勅許され,頼朝が全国にわたるそれの補任権を一括して獲得した地頭職は,頼朝がその家人に対し,主従制を前提として宛て行うものであって,これは封建的知行の対象であった。その意味で,荘園公領制的職の秩序は,地頭職の設置によって大きく性格を変えたのである。

 さらに鎌倉時代を通じて,地頭が荘園領主権を侵犯し,在地領主としての立場を強めるにつれて,地頭職はその職権として規定された範囲をこえ,得分権・利権的側面を強くし,事実上,自立的領主権に近づいた。下地中分による地頭分はその帰結を示すものといってよく,折半された一部ではあるが,そこではもはや職務としての制限面は消滅しているのである。そのような方向は鎌倉後期から始動し,南北朝内乱期に全面的に進行した。その結果,地頭の職による制約=規定性は希薄となり,彼らは研究上でも国人領主と呼ばれるような存在に転化した。またそれに照応して,中央領主の職であった本家職,領家職は,それに見合う年貢・雑公事などの収取が困難となり,かつそのような権利の動揺,在地領主による侵犯が生じても,そのような不法行為を排除してくれる国家の裁判権,強制執行力が衰弱したため,荘園公領制的職の秩序が全般的に崩壊しはじめた。ところがまさしくこの時期に,農村では名主職,作職,下作職などという形で,農民の土地に対する権利が職で表示されるようになる。それらはおそらく,荘園領主権の衰退にともなって農民諸層の耕地に対する私的権利が強まってきたことを示すものであり,得分の面でも,1反当りの名主職得分はしばしば年貢量と同等もしくはそれを上回るほどの量に達している。このような農民的職の出現を,荘園公領制的職の秩序の農村末端への浸透と見る見解も存在するが,むしろ,本来の職秩序が解体するなかで農民の権利が私的権利の呼称としての職を用いて表示するようになったと見たほうがよい。これらの農民的職は,荘園領主側から承認されるものでなかったことがその点を示している。
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百科事典マイペディア 「職」の意味・わかりやすい解説

職【しき】

古代律令官制で,省の下,寮・司の上に,中宮職・大膳職・修理職などの官があったが,平安中期以降,職務的な機能に伴う収益権,土地の用益権そのものを指す言葉となった。これらの収益権,用益権が世襲的私的財産化したことを示しており,古代から中世への移行を特徴づけるものと考えられている。官職である郡司の地位は〈郡司職〉と称され,相伝・譲与の対象とされた。荘園でも本家職・領家職・下司職など,公領でも郷司職・保司職などと称し,私的財産化する。鎌倉時代,頼朝が全国の補任権を獲得して家人に宛て行った地頭職は,私的財産権の性格に加えて,封建的知行権をも得ることとなり,地頭は,職権の範囲を超えて荘園領主権を侵犯し,国人領主化していった。同時期農村でも名主(みょうしゅ)職・作(さく)職・下作(げさく)職など農民的職が出現する。→律令制
→関連項目質侶牧知行真継家村櫛荘

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「職」の解説


しき

1大宝・養老令制の官司の等級の一つ。八省の被管官司には職・寮・司などがあるが,このなかで最も格が高い。四等官の名称は順に大夫・亮・進・属で,これらの官員の官位相当の高さから二つの等級にわかれる。中務(なかつかさ)省被管の中宮職のみが1級高く,以下に宮内省被管の大膳職や,京を管轄する左右京職,難波宮および津国を管轄する摂津職(せっつしき)があった。令外官(りょうげのかん)の造宮職・修理(しゅり)職もこれに準じる。

2平安中期~中世の社会で,私的な財産と化した官職・職務。職の系譜上の起源は令制官司の職にあるが,10世紀以降,ある種の職務や支配体制上の地位は,それにともなう収益・得分とともに相伝・譲与されるものに変質し,「職」の名を付してよぶようになった。まず郡司の地位が郡大領職・少領職・郡司職などと表示され,ついで私的な財産として相伝・譲与されるようになった。このような公権・官職の私財化が郡司から始まるのは,もともと郡司が世襲されることの多い特異な官職であったことによろう。荘園公領制の展開とともに,荘園では本家職・領家職・預所(あずかりどころ)職・下司(げし)職などが,公領では郷司(ごうじ)職・保司(ほうし)職などがうまれ,一つの荘園あるいは公領は,いくつかの職が上下に重なりあって支配・領有された。在京の貴族や寺社が諸国に広く分布した本家職や領家職などの職を知行しえたのは,朝廷や国衙の力によるところが大きく,その意味で職の秩序は,国家の支配体系としての性格をなお残していた。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「職」の意味・わかりやすい解説


しき

(1) 律令官制において中宮職,大膳職,京職などの役所の名称に用いられた。省の下,寮の上におかれ,長官を大夫,次官を亮,判官を進,主典を属といい,判官以下はそれぞれ大少に分れている。 (2) 職務,職掌,権益などを表わすのに用いられた。平安時代中期以降,荘園制の発展に伴って,本家職,領家職,預所職,下司職,公文 (くもん) 職,田所 (たどころ) 職,名主 (みょうしゅ) 職,作職,下作職,大工職など多くの職が生じたが,これらは職務を示すとともに,それに付随した得分権 (権益) を含むものであり,また土地用益権だけをさす場合もあった。これは国司をさす吏務職,源頼朝が設置した守護職,地頭職の場合も同様である。

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旺文社日本史事典 三訂版 「職」の解説


しき

「つかさ」という国語に相当する語で,職務や職掌の意味
①律令官制の中宮職・大膳職・左右京職・摂津職など。
②中世,荘園制の発展に伴い,地頭職・預所 (あずかりどころ) 職・下司 (げし) 職など,職務に付随した土地用益権をも意味するようになり,さらにその収益権のみをさすようになった。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【一職】より

…土地に対する多種多様な権利((しき))を一元的に支配掌握すること。中世においては一枚の耕地に下作(げさく)職,作職,名主(みようしゆ)職,領主職などの多様な権利が重層的に存在したが,16世紀の畿内地方ではこれらの職を買得などによってひとつにまとめ,領主―作人の一元的な年貢収納関係を作り出す動きが顕在化した。…

【下作人】より

…〈したさくにん〉ともいう。田畠の直接耕作者で,その土地の上級得分収取権者である本所・名主・作人(作職所有者)に対し,それぞれ年貢・加地子(名主得分)・作徳(作職得分)を負担する立場にあった農民のこと。彼がその田畠に対して持つ関係は下作職(げさくしき)と表現され,通常これはすぐ上級の所職である作職の所有者からあてがわれるもので,下作人はこれに対して地子の上納と,それを怠った場合はいつ所職を取り上げられてもいたしかたない旨を誓約した下作職請文(うけぶみ)を提出した。…

【作職】より

…主として鎌倉~戦国期に用いられた語で,作人職(さくにんしき)の略称。ときに作主職とか百姓職と表現される場合もあった。…

【知行】より

…中世~近世の歴史用語。本来は仕事・事務・職務を執り行うことを意味した。古語の〈しる〉(自分のものにする,自分のものとして取り扱う,という意味で,英語のmasterにほぼ相当する言葉)に漢字の〈知〉があてられたところから,〈知り行う〉→〈知行〉と展開したものと思われる。…

【中世法】より

… 以上のほかに,商品の生産・流通・販売等に特権をもつ座(ざ),供御人(くごにん)等の座法,演技上の特権や技芸伝授の秘匿性を主内容とする諸芸能の座法,また主として16世紀以降の畿内および周辺地域に見られる地縁共同体の村掟・町掟等がある。
【中世法の特質】
 古代国家の解体のあとに現れた王朝国家においては,中央貴族の各氏が,中央官庁内の個別特定の官司を家業として請負的に運営するという,特徴的な政治機構運営方式に象徴されるように,最も価値ある体制概念は,第1に家業であり,第2に家業連合体としての職能団体であった。王朝国家の内部に生まれた荘園領主権力たる本所においても,また,王朝国家におくれて出現した鎌倉幕府およびこれを継承した室町幕府においても,この点は基本的に同じであった。…

※「職」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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