組織を構成する多数の職位または官職positionを職務の種類および複雑さと責任の度合に応じ,等級をつけて分類整理する計画または制度をいう。国家公務員の場合,官職とは一般職に属する職であり,その内容は1人の職員に割り当てられる職務と責任であり,個人のもつ資格,成績,または能力ではない。職階制は,官職をまず職務の類似性によって職群,職種に大別し,さらに職務の複雑さと責任の度合によって職級に細別する。職級については,職級明細書を作成し,その名称および職務内容を定めている。この職務明細書を基礎として,すべての官職がいずれかの職級に格づけされ,任用,給与の公平,行政における能率の向上と責任の明確化,人件費の合理化等に寄与するものとされている。
職階制は,アメリカの猟官制度改革の過程で,20世紀初頭から科学的人事行政の確立のための手段として,1912年シカゴ市で初めて採用され,23年の職階法classification actによって連邦レベルにも採用され,漸次発展してきた。日本でも第2次大戦後,国家公務員法のなかに,職階制導入の方向が規定され,〈国家公務員の職階制に関する法律〉(1950公布)が制定された。また地方公務員についても条例で設けることになった。しかしその具体化については批判や抵抗が強く未実施の状態であり,給与に関してのみ職務の分類が行われているにすぎない。したがって任用,昇進等と結びついた職階制は確立していないといってよい。職階制は,前近代的・身分的官吏制度の改革や猟官制度などの情実任用制度の弊害を除去するのに役だつ側面をもっていることは疑いない。しかしこのような技術的合理性が真に根づくためには,それにふさわしい歴史的社会風土の確立が求められる。
→人事行政
執筆者:君村 昌
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
職務の内容と責任の程度により序列を設定する人事制度。これにより、職務担当者の採用、配置、服務、教育訓練、賃金などの人事管理上の諸問題を合理的に処理し、能率向上を実現しようとするものである。職階制は、組織を職務本位に設計し、職務に人を適合させ、情実や専断を排し、昇進・昇給を科学化する。賃金を職務に応じて公正化し(職階給)、能力実証を中心にした人事考課(勤務評定)を可能にする。アメリカの公務員ではすでに19世紀後半から課題にされ、1918年に実施された。日本ではアメリカの制度に倣い、1950年(昭和25)に採用された。そこでは、すべての職務は、職群(大分類)、職種(小分類)、職級(複雑困難性と責任の程度による等級)によって分類された。しかし実態はかなり形骸(けいがい)化した面が多かったため、行政改革によって2009年(平成21)に廃止された。企業においては、担当する職能と保有する能力を組み合わせた職能資格制度を採用している事例が多く、職階制という用語は使用されていない。
[森本三男]
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