職階制(読み)ショッカイセイ(英語表記)position classification plan

デジタル大辞泉 「職階制」の意味・読み・例文・類語

しょっかい‐せい〔シヨクカイ‐〕【職階制】

大規模な経営組織体で、職務全体を職務の種類および複雑さと責任の度合いによって体系的に分類・整理する計画、またはその制度

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「職階制」の意味・読み・例文・類語

しょっかい‐せいショクカイ‥【職階制】

  1. 〘 名詞 〙 官庁民間の大規模な経営組織体で、それを構成する多数の職務を、その種類、複雑さ、責任の度合などから分類し整理する制度。合理的・能率的な人事管理を目的にしたもので、二〇世紀初頭アメリカで発達。第二次世界大戦後日本の公務員制度にも採用されているが、給与面を除いて、まだ正式に行なわれていない。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「職階制」の意味・わかりやすい解説

職階制 (しょっかいせい)
position classification plan

組織を構成する多数の職位または官職positionを職務の種類および複雑さと責任の度合に応じ,等級をつけて分類整理する計画または制度をいう。国家公務員の場合,官職とは一般職に属する職であり,その内容は1人の職員に割り当てられる職務と責任であり,個人のもつ資格,成績,または能力ではない。職階制は,官職をまず職務の類似性によって職群,職種に大別し,さらに職務の複雑さと責任の度合によって職級に細別する。職級については,職級明細書を作成し,その名称および職務内容を定めている。この職務明細書を基礎として,すべての官職がいずれかの職級に格づけされ,任用,給与の公平,行政における能率の向上と責任の明確化,人件費の合理化等に寄与するものとされている。

 職階制は,アメリカの猟官制度改革の過程で,20世紀初頭から科学的人事行政確立のための手段として,1912年シカゴ市で初めて採用され,23年の職階法classification actによって連邦レベルにも採用され,漸次発展してきた。日本でも第2次大戦後,国家公務員法なかに,職階制導入の方向が規定され,〈国家公務員の職階制に関する法律〉(1950公布)が制定された。また地方公務員についても条例で設けることになった。しかしその具体化については批判抵抗が強く未実施の状態であり,給与に関してのみ職務の分類が行われているにすぎない。したがって任用,昇進等と結びついた職階制は確立していないといってよい。職階制は,前近代的・身分的官吏制度の改革や猟官制度などの情実任用制度の弊害を除去するのに役だつ側面をもっていることは疑いない。しかしこのような技術的合理性が真に根づくためには,それにふさわしい歴史的社会風土の確立が求められる。
人事行政
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「職階制」の意味・わかりやすい解説

職階制
しょっかいせい
job classification plan

職務の内容と責任の程度により序列を設定する人事制度。これにより、職務担当者の採用、配置、服務、教育訓練、賃金などの人事管理上の諸問題を合理的に処理し、能率向上を実現しようとするものである。職階制は、組織を職務本位に設計し、職務に人を適合させ、情実や専断を排し、昇進・昇給を科学化する。賃金を職務に応じて公正化し(職階給)、能力実証を中心にした人事考課(勤務評定)を可能にする。アメリカの公務員ではすでに19世紀後半から課題にされ、1918年に実施された。日本ではアメリカの制度に倣い、1950年(昭和25)に採用された。そこでは、すべての職務は、職群(大分類)、職種(小分類)、職級(複雑困難性と責任の程度による等級)によって分類された。しかし実態はかなり形骸(けいがい)化した面が多かったため、行政改革によって2009年(平成21)に廃止された。企業においては、担当する職能と保有する能力を組み合わせた職能資格制度を採用している事例が多く、職階制という用語は使用されていない。

[森本三男]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「職階制」の意味・わかりやすい解説

職階制
しょっかいせい
position classification plan

官公庁や大企業などの近代的組織において,多量かつ多種多様な職務を内容の複雑性,困難性,責任性などに応じていくつかの集団に分類整理し,科学的人事管理を目指す制度。この制度の根幹をなす職務の分類は,職務の客観的内容によって行われ,まず「職種」に,次に「職群」に類別し,さらにそれを等級に区分して「職級」がつくられる。こうして給与や任用の公平,責任の明確さが期待されることとなる。アメリカで一般的な制度であるが,日本の場合は前近代的な身分制的序列感覚と結びつけて考えられるため,実際には賃金格差が持込まれたり,身分的な差別が設けられることとなり,身分的序列と同義に使用されることが多い。国家公務員の職階制に関する法律によると職階制とは,「官職を,職務の種類及び複雑と責任の度に応じ,……分類整理する計画」である。官職とは「1人の人間に割当てられた職務と責任」であり,個人のもつ能力や資格ではない。この官職を職務の類似性によって,職種に大別し,さらに複雑さと責任を基準にして職級に細別する。人事院によって国家公務員の職階制が実施されることになっているが (国家公務員法 29,国家公務員の職階制に関する法律参照) ,厳密な意味での実現はまだなされていない。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「職階制」の意味・わかりやすい解説

職階制【しょっかいせい】

近代的人事管理に不可欠な職務分類制度。職務をその内容と責任の程度に応じて体系的に職種と等級に分け,これを基準として任用・給与(職階給)などを決定,能率の向上を図ろうとする。1910年代の米国で始まり,第2次大戦後日本でも公務員の人事管理に採用され,さらに民間企業にも広がっている。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

今日のキーワード

世界の電気自動車市場

米テスラと低価格EVでシェアを広げる中国大手、比亜迪(BYD)が激しいトップ争いを繰り広げている。英調査会社グローバルデータによると、2023年の世界販売台数は約978万7千台。ガソリン車などを含む...

世界の電気自動車市場の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android