明治初年以来鉱工業,農業,商業などの産業を実業と総称する習慣が生まれ,一般にこれら実業に従事しようとする者のための教育を行う学校を実業学校と称したが,1899年の実業学校令制定後は同令に準拠する学校を意味した。1910年には学校数(実業補習学校,実業専門学校を除く)477校,生徒数約4万人であったが,最盛期の45年には1743校,生徒数約40万人に達した。実業学校には,次の種類があった。(1)機械,電気などの近代工業の諸学科と実習を教授する工業学校。(2)工業徒弟の育成をめざした徒弟学校。これは21年に廃止され,多くは工業学校となった。(3)女子に裁縫などを教授する学校は当初徒弟学校の一種とされたが,21年以後職業学校とされた。(4)広く農業の学理と実際を教授する農業学校(獣医学校をふくむ)。(5)漁業,養殖などの学理と実際を教授する水産学校。(6)商業学校。(7)商船学校。(8)初等教育の補習を兼ねた実業補習学校。(9)専門学校令に準拠した高水準の実業教育を行う実業専門学校(専門学校)。このうち(8)(9)は除外して考えることが多い。また(8)(9)を除いた各学校は入学資格,修業年限などの違いにより甲種,乙種に区分され(21年以降は制度上の区分ではなく通称),甲種実業学校は,その卒業生に専門学校入学資格が与えられており,中等学校程度として扱われた。実業学校の大部分は,第2次大戦後は,高等学校の職業学科(単科の場合は職業高校)に再編された。
→産業教育 →実業教育
執筆者:佐々木 享
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1947年(昭和22)4月1日に法律上廃止された各種の実業教育機関の総称。1872年(明治5)の「学制」のなかで中学の一種としてあげられた工業学校、商業学校、農業学校等にその源をみることができる。しかし実際には、その体系化は、1883年の農学校通則や翌年の商業学校通則に始まり、93年の実業補習学校規程や翌年の徒弟学校規程あるいは簡易農業学校規程を経て進められ、99年の「実業学校令」によって制度上初めて統一的な位置が与えられた。この勅令では、工業、農業、商業、商船、実業補習のための5種類の学校があげられた。一般に甲種、乙種に分かれ、甲種は高等小学校卒業者を入学資格として修業年限3年、乙種は尋常小学校卒業後3年とされた。その後、1920年(大正9)の実業学校令の改正によって、甲種・乙種の区別を廃止するとともに、修業年限5年の実業学校も認めるようになり、また24年の改正では、尋常小学校卒業後の修業年限を5年、高等小学校卒業後の修業年限を3年とした。さらに1943年(昭和18)には、中等学校令の制定によって、実業学校を中学校および高等女学校と制度的に同格の中等学校と定め、国民学校初等科卒業後の修業年限を4年(1946年に5年と改正)、国民学校高等科卒業後の修業年限を3年とした。実業学校は、中等学校としてわが国の近代産業の発展に貢献してきたが、学校系統のうえではつねに傍系視される傾向が強かった。
[真野宮雄]
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実業に従事する者のための第2次大戦前の教育機関。初等程度の実業補習学校,中等程度の実業学校,専門学校程度の実業専門学校に区分できるが,通常は1899年(明治32)の実業学校令によって法的に整備された中等程度の実業学校をさす。徒弟学校を含む工業学校・農業学校・商業学校・商船学校・実業補習学校などがおかれたが,1943年(昭和18)中等学校令制定にともない実業学校令は廃止され,中学校・高等女学校とともに中等学校として一括して位置づけられた。戦後は大部分が新制高等学校の職業学科や職業高等学校に移行した。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
…第2次大戦後は実業教育と称することは少なく,ほぼ同様の教育は産業教育あるいは職業教育と称されている。実業教育の萌芽は70年代からみられたが,井上毅文相のもとで94年に実業補習学校規程および実業教育費国庫補助法が制定されて政府が積極的に奨励策をとりはじめると,おりからの日本資本主義の発展のもとで急激に発達しはじめ,実業学校令(1899)および専門学校令(1903)の制定により体系的に整備された。実業学校は,当初から実業学校として創設されたものが大部分であったが,農事講習所,蚕業講習所などのように,当初は他省所管の施設で後に文部省所管の実業学校となったものもある。…
…アメリカではいち早くこの改革にとり組んだが,西欧諸国では中等学校の伝統への執着が強く,他方で職種別に組織された労働組合が職種ごとの職域に固執する傾向が強いこととあいまって職業教育の内容が細分化され専門化しているため,この面での教育制度改革にはなお未解決の課題が多い。
[日本の職業教育]
明治維新後の日本では,大工,建具職などの伝統的な職業の分野では年季制で技能を伝習する旧来の教育方法が一般化したが,近代的な産業諸分野では,1894年の実業教育費国庫補助法,99年の実業学校令により,初等教育の基礎のうえに職業教育を行う実業学校の制度が普及したほか,時代の要求に敏感に対応する柔軟な教育システムをもつ各種学校が普及した。工業,農業,商業,水産などの中等程度の実業学校は,第2次大戦後の教育改革によって高等学校の職業学科として再編され,国民教育制度としての中等教育の一部を構成している。…
※「実業学校」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
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