胴上げ(読み)ドウアゲ

デジタル大辞泉 「胴上げ」の意味・読み・例文・類語

どう‐あげ【胴上げ/胴揚げ】

[名](スル)大勢で、人のからだを横にして何回空中に投げ上げること。多くは、祝福するときなどに行うが、制裁いたずらの気持ちですることもある。「監督を―する」

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精選版 日本国語大辞典 「胴上げ」の意味・読み・例文・類語

どう‐あげ【胴上・胴揚】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 多くの人が群がって、ひとりの人のからだを横にして、腕にささえて、何度も空中に投げあげること。祝福・親愛の情などを表わす場合に行なわれる。
    1. [初出の実例]「お目出度いお酒でお蕎麦を御馳走になって胴上げを二三度やられたんだ」(出典:落語・高野違ひ(1895)〈四代目橘家円喬〉)
  3. 制裁のため、あるいはふざけてと同様にすること。
    1. [初出の実例]「左様して誰もつかまらずば、胴揚(ドウアゲ)にいたしませう」(出典:人情本・春色玉襷(1856‐57頃)二)
  4. 江戸時代、一二月一三日の煤払いのあと、祝儀と称して面白半分に、女中などをと同様にしたことをさす。また節分の夜には、婦女が集まって年男を胴上げした。
    1. [初出の実例]「胴上の一番がけは御腰元」(出典:雑俳・俳諧觿‐一四(1798))

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改訂新版 世界大百科事典 「胴上げ」の意味・わかりやすい解説

胴上げ (どうあげ)

おおぜいの人が1人の身体を横にかかえて空中に高く投げ上げること。〈胴に上げる〉〈胴に突く〉〈胴を打たす〉ともいう。今日ではスポーツ競技での勝者,結婚式での新郎,入学試験の合格者などを祝福して行われる。江戸時代には12月13日の媒(すす)払いや節分などに御祝儀といって女中を胴上げにしたり,年男を胴上げにする風習があり,また江戸城の大奥でも煤払いの夜に中年寄御中﨟(ちゆうろう)が仲間から胴上げにされることがあった。胴上げは祝福のほか,制裁としても行われ,《好色一代男》には新参の入牢者を胴上げして地面に打ちおとす場面が出てくる。日本以外でもイギリスのリバプールなどでは,18世紀末までイースター・マンデー(復活祭の月曜日)に男が女を胴上げにし,翌日は女が出会った男を胴上げにしたといい,またシベリアのロシア人は,送別会の際に最高の敬意を表すために送られる人を胴上げにしたという。

 胴上げは手車や肩車と同様に,足を地面に触れさせないことに意味があり,非日常的な神聖な状態にあることを示す行為とされている。神事で新たに頭屋(とうや)となった者や厄年の者,前年に結婚した者を正月などに胴上げにする風習は各地にみられた。またドウブルイといって,参詣,祭り,年祝などの後の精進落しとして行われる行事も,胴上げに関連するものと思われる。信州善光寺では御越年式の最後に堂童子(どうどうじ)の胴上げがあり,この後はじめて堂内の鐘太鼓が打ち鳴らされ,堂内のすべての扉が開かれるという。胴上げは,日常と非日常,旧年と新年,この世と異界といった二つの異なった世界(身分,地位,時間,空間など)の境界で行われる移行儀礼とみることができるであろう。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「胴上げ」の意味・わかりやすい解説

胴上げ
どうあげ

多くの人が群がって、1人の人の体を横にして、何度も空中に投げ上げること。主として祝福の表現として行われ、いまではスポーツの優勝チームの間などにみられる。在来の習俗としては、神事にあたって新たに神役についた人を胴上げする例が知られており、江戸時代には12月13日の煤(すす)払いのあと、祝儀として主人以下一同の胴突き(胴上げのこと)をしたり、おもしろ半分に女中などを胴上げすることがあった。『甲子夜話(かっしやわ)』(1821~41)によると、節分の日に年男を務める者を婦女たちが「胴に揚げる」ことがあったという。類似習俗としては、舟おろし(進水式)のときに舟主を海に投げ込むとか、神役を肩車したり背負ったりして土を踏ませないなどがある。胴上げの由来に関しては明確でなく、〔1〕喜びの表現、〔2〕神聖説、〔3〕神聖の変形としての制裁や追放、〔4〕俗から聖への過渡移行の儀礼、などが考えられる。諸民族の習俗との比較も必要である。

[井之口章次]

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