六訂版 家庭医学大全科 の解説
〈脊髄の病気〉脊髄空洞症
〈脊髄の病気〉せきずいくうどうしょう
Syringomyelia
(運動器系の病気(外傷を含む))
どんな病気か
脊髄は、脳から腰の上部へと連続する中枢神経の一部です。脳や脊髄のまわりには
脊髄の中心部には中心管と呼ばれる管がありますが、この中心管と交通のある
原因は何か
脳脊髄液の通過障害や頭蓋内圧と脊髄腔圧の較差が原因になりますが、はっきりとした原因は解明されていません。
また、脊髄のまわりへの髄液の流れが障害された場合、脳脊髄液が中心管に流れてしまい、中心管が拡大して空洞を形成することがあります。
症状の現れ方
症状は、空洞症により障害を受けた脊髄の神経支配領域にそった温痛覚障害です。頸椎に病変がある場合は、上肢に症状が出現します。
空洞症による温痛覚障害の特徴は、たとえば、腕を強くつままれてもふれられているという感覚はあるのに、痛みや熱さを感じなくなります。この現象は
外傷性の脊髄空洞症では、
そのほか、典型的ではありませんが、皮膚の栄養障害による手の乾燥、はれ、時に爪の変形が生じることもあります。
検査と診断
MRI検査により脊髄空洞症の存在は明らかになります。脊髄のなかにMRIのT1強調像で低輝度性変化(黒い陰影)がみられ、T2強調像で高輝度性変化(白い陰影)がみられれば診断は容易です。キアリ奇形は、MRI検査で小脳や脳幹部にも異常がみられ、X線やCT検査によって頭蓋・頸椎移行部の骨病変を検索します。
治療の方法
無症候性であれば経過観察となりますが、症状がいったん出現すれば自然軽快することはまれです。症状が進行する場合では保存的治療は効果がなく、手術的治療が必要になります。
病気に気づいたらどうする
疑わしい症状の発現に気づいたら、近くの脳神経外科あるいは整形外科を受診しましょう。MRI検査を行えば診断は容易です。本症が確定診断された場合は、
豊田 宏光, 中村 博亮
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報