改訂新版 世界大百科事典 「臭素酸カリウム」の意味・わかりやすい解説
臭素酸カリウム (しゅうそさんカリウム)
potassium bromate
化学式KBrO3。無色三方晶系の結晶。融点370℃(分解を伴う),比重3.27(17.5℃)。水100gへの溶解度3.11g(0℃),49.75g(100℃)。エチルアルコールに難溶,アセトンに不溶。融点以上でしだいに酸素を放って分解し,臭化カリウムに変化する。水溶液は強い酸化剤で臭素酸塩滴定に用いられ,容易に再結晶できるため,酸化還元滴定における標準物質となる。水酸化カリウムの水溶液に臭素を加え,煮沸したのち冷却し,分別結晶によって,副生した臭化カリウムを分離したのち,水溶液から再結晶して製する。
6KOH+3Br2─→KBrO3+5KBr+3H2O
臭化カリウムの温水溶液を隔膜を用いないで電解してもできる。分析用試薬として,臭素酸塩滴定,有機化合物・有機配位子キレート等の臭素化滴定の標準液の調製,ヨウ素滴定におけるチオ硫酸塩二次標準液の標定(BrO3⁻+6I⁻+6H⁺─→Br⁻+3I2+3H2Oの反応を利用)に用いられる。なお,塩素酸カリウムKClO3を俗に塩剝(えんぽつ)と呼ぶが,俗に臭剝(しゆうぽつ)といわれているのは臭化カリウムKBrのことで,臭素酸カリウムではない。
執筆者:藤本 昌利
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報