色消しレンズ(読み)いろけしレンズ

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「色消しレンズ」の意味・わかりやすい解説

色消しレンズ
いろけしレンズ
achromatic lens

色収差補正した組合せレンズ。色収差を補正するために,レンズ材質屈折面の曲率半径,レンズの配置などの間で満たされるべき条件を色消し条件という。すべての色に対して完全に色消しするのは非常に困難であるが,使用する波長範囲内の適当な2つか3つの光に対して色消しすれば,ほぼ目的が達せられる。色収差を2色に対し補正したものをアクロマート,3色以上に対し他の収差も含めて高い補正をしたものをアポクロマートという。肉眼用レンズでは赤色のC 線と青色のF 線に対し色消しを,オレンジ色のD 線に対し球面収差の補正をする。2色に対し色消しするには,焦点距離 1f2 の同じ材質の2枚のレンズを間隔 d=(f1f2)/2 で置く。また,材質が違う凸レンズ凹レンズを密着させたレンズ系による色消し条件は,左右両面および密着面の球面半径を r1r2 および r ,両材質の2つの波長に対する屈折率の差を Δn1Δn2 とすると,Δn1/r1Δn2/r2=(Δn1Δn2)/r である。普通はクラウンガラスの凸レンズとフリントガラスの凹レンズとを組合せる。精密な色消しレンズでは,3枚以上の特殊な材質のガラスを用いる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「色消しレンズ」の意味・わかりやすい解説

色消しレンズ
いろけしれんず

色収差を補正したレンズ。1枚の単レンズでは、どうしても色収差が生ずる。これを防ぐには、2枚のレンズを密着させて、1枚のレンズで生じた色収差を他方のレンズで打ち消すようにする。このようにして色収差を補正したレンズをアクロマートという。アクロマートでは二つの波長に対してだけ色収差が補正され、その他の波長に対しては色収差が残る。この残存色収差を補正して、もっとよい色収差の補正状態に達したレンズのことをアポクロマートという。これは、3枚以上のレンズを組み合わせて、三つ以上の波長に対して色収差がなくなるようにしてある。写真製版IC集積回路)製作用のレンズは、アポクロマートにする必要がある。高倍率の顕微鏡対物レンズもアポクロマートであることが望ましい。同じガラスでできた2枚の単レンズを適当な距離だけ離したレンズ系でも、焦点距離の色消しを達成できるので、望遠鏡や顕微鏡の接眼レンズとして用いられる。

[三宅和夫]

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