花輪盆地(読み)はなわぼんち

改訂新版 世界大百科事典 「花輪盆地」の意味・わかりやすい解説

花輪盆地 (はなわぼんち)

秋田県北東部,米代川上流の盆地鹿角(かづの)盆地ともいう。奥羽山脈とその西側の高森山地間の断層盆地で,北に大きく開いたくさび形を呈する。南北約20km,東西最大4km。西部を限る花輪断層沿いに南から米代川,北から小坂川が流れ,花輪線十和田南駅付近で合流して,大館盆地に向かう。東からの大湯川は錦木(にしきぎ)地区で小坂川に合流する。盆地床は4段の段丘面と,これを切る米代川本支流の沖積地からなり,東部~北東部の段丘は十和田火山噴出にともなう火山灰,軽石や,その二次堆積によるものが多い。段丘面はリンゴ畑や普通畑に利用され,鹿角リンゴの主産地である。野菜類ではキュウリ,トマトが栽培される。小坂町内ノ岱(うちのたい),上向(うわむき)地区は盆地最大の黒鉱鉱床で,黒鉱は同和鉱業小坂鉱業所(小坂鉱山)で製錬された。高森山地の尾去沢鉱山は古くから開けた有力銅山であったが,1978年に閉山した。坑道の一部はマインランド尾去沢(2008年〈史跡尾去沢鉱山〉と改称)に再現されている。大館と盛岡を結ぶ鹿角(津軽街道(国道282号線)は,北日本の東西連絡路線として重要で,JR花輪線が並走し,街道筋には鹿角市に属する毛馬内,花輪の2中心集落がある。この地域は近世まで陸奥国に属し南部藩領であったが,1871年(明治4)岩手県から秋田県に移った。そのため伝統的に盛岡との結びつきが強い。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「花輪盆地」の意味・わかりやすい解説

花輪盆地
はなわぼんち

秋田県北東部、米代川(よねしろがわ)の上流部にある地溝盆地。鹿角盆地(かづのぼんち)ともいう。東部は奥羽山脈、西部は高森山地と接する。盆地床は四段の段丘面と、これを切る米代川および小坂川の沖積地からなる。段丘を構成する堆積(たいせき)物は十和田火山(とわだかざん)の軽石質火山灰などを主とする。畑地やリンゴ園として利用される。沖積地は現河川沿いに狭長に分布するほか、盆地中央部から東部にかけて扇状地として広く発達し、水田化されている。水系は西に偏っており、米代川本流が盆地西縁を北流し、小坂川と錦木(にしきぎ)付近で合流し、先行性の流路となって西方の大館(おおだて)盆地に通ずる。盆地の中心は鹿角市で、江戸時代は盛岡藩に属し、移住開拓者や通婚も岩手県との関係がみられる。

[宮崎禮次郎]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「花輪盆地」の意味・わかりやすい解説

花輪盆地
はなわぼんち

別称鹿角 (かづの) 盆地。秋田県北東部,米代川上流の奥羽山脈西麓にある断層盆地。南北約 20km,東西約 4km,面積約 65km2。西部に偏して米代川が北流し,熊沢川と小坂川が盆地中央付近で合流。扇状地や河岸段丘上ではリンゴが栽培され,沖積地では米を産する。盆地周辺は鉱産資源が豊富で,かつては小坂,古遠部,花輪の諸鉱山があったが,現在は採掘していない。鹿角市,小坂町に広がり,JR花輪線,国道 282号線が通り,東北自動車道の十和田・小坂両インターチェンジがある。

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世界大百科事典(旧版)内の花輪盆地の言及

【群書類従】より

塙保己一編の叢書。正編1270種530巻666冊,続編2103種1150巻1185冊からなる日本最大の叢書。…

【児玉[町]】より

…関越自動車道本庄インターチェンジ付近の旧開拓地は工業団地となっている。塙保己一の出身地で,旧宅(史)や記念館がある。JR八高線が通じる。…

【図書館】より

…彼はまた《類聚(るいじゆう)国史》を撰しているが,これは,そのときまでに出た六国史それぞれの中から事項別に原文を抜粋し編集したもので,カード(短札)方式による知識情報の処理の最初の例ともいえる。この〈類聚〉という考え方こそ,後の塙保己一(はなわほきいち)の《群書類従》,明治政府の《古事類苑》などに通じる類書的発想,ひいては今日の情報管理の原則たる知りたい知識情報そのものへの接近を可能ならしめる工夫である索引,抄録の思想につながるものである。それはまた史料編纂所の大事業《大日本史料》編纂にも受け継がれている。…

【武家名目抄】より

…武家故実書。塙保己一(はなわほきいち)ら編。381冊。…

【和学講談所】より

…江戸時代,塙保己一の建てた,和学ことに国史律令の講究編纂を目的とした学舎。和学所ともいう。…

※「花輪盆地」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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