(読み)ビョウ

デジタル大辞泉 「苗」の意味・読み・例文・類語

びょう【苗】[漢字項目]

常用漢字] [音]ビョウ(ベウ)(漢) ミョウ(メウ)(呉) [訓]なえ なわ
〈ビョウ〉
なえ。「種苗青苗
植えつけて育てるもの。「痘苗
子孫。血すじ。「苗裔びょうえい
中国南方に住む民族の名。ミャオ。「苗族
〈なえ〉「苗木苗床早苗さなえ
〈なわ〉「苗代なわしろ
[名のり]たね・なり・みつ
[難読]芋苗ずいき苗字みょうじ

なえ〔なへ〕【苗】

種から芽を出して間のない草や木。定植前の草木
稲の苗。さなえ。
[類語]苗木早苗

みょう【苗/猫】[漢字項目]

〈苗〉⇒びょう
〈猫〉⇒びょう

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精選版 日本国語大辞典 「苗」の意味・読み・例文・類語

なえなへ【苗】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 種子から発芽して間のない幼い草や木。特にそのうちで、草本植物のものを苗、木本植物のものを苗木という。
    1. [初出の実例]「春霞春日の里の植子水葱(うゑこなぎ)(なへ)なりといひし枝はさしにけむ」(出典万葉集(8C後)三・四〇七)
    2. 「既になゑをすゑ」(出典:東寺百合文書‐を・文安四年(1447)卯月日・上久世庄下作人等申状)
  3. 特に、稲の苗。さなえ。
    1. [初出の実例]「上毛野(かみつけの)佐野田の奈倍(ナヘ)の占苗(むらなへ)に事は定めつ今は如何にせも」(出典:万葉集(8C後)一四・三四一八)
    2. 「春は一二万丁のたに、なはしろをまき、なへを植ゑても」(出典:宇津保物語(970‐999頃)吹上上)
  4. なえいろ(苗色)」の略。

びょうベウ【苗】

  1. 〘 名詞 〙びょうぞく(苗族)〔宋之問‐洞庭湖詩〕

みょうメウ【苗】

  1. 〘 名詞 〙 京都府丹波地方で、同族集団をいう。

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普及版 字通 「苗」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 8画

(旧字)
9画

[字音] ビョウ(ベウ)
[字訓] なえ・かり・すえ

[説文解字]

[字形] 会意
艸(そう)+田。〔説文〕一下に「艸の田に生ずるなり」とあり、禾苗(かびよう)をいう。また田猟の意に用い、〔左伝〕〔穀梁伝〕では夏、〔公羊伝〕では春の狩猟をいう。苗裔(びようえい)のように遠孫の意に用いるのは、秒・渺の声義に用いたものであろう。南方の苗族は古くは江南の地の東西の山地に居り、北方と対峙する雄族であった。

[訓義]
1. なえ、草木のなえ、穀物のなえ、穀物。
2. かり、かりして祭る。
3. すえ、あと、苗裔、遠孫。
4. もろもろ、たみ。
5. 苗人、苗族。

[古辞書の訓]
〔新字鏡〕 狩なり。生をと曰ふ。夏の時を以て狩するを加利須(かりす)と曰ふ 〔名義抄 ナベ・カリ・カリス

[語系]
・杪・秒・眇・渺・妙・miは同声。標piは〔説文〕六上に「木の杪末(べうまつ)なり」とあり、みな秒末・微少の意があり、眇(びよう)声。票(ひよう)声の字にときに渺の意がある。

[熟語]
苗胤・苗裔苗稼・苗戸苗茨・苗子苗嗣・苗狩・苗緒苗牀・苗条苗稚苗田苗圃・苗米・苗末・苗脈・苗猟
[下接語]
秧苗・禾苗・夏苗・嘉苗・稼苗・穀苗・三苗・山苗・種苗・苗・黍苗・場苗・蚤苗・稲苗・麦苗・晩苗・薬苗・養苗・立苗・良苗・黎苗

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「苗」の意味・わかりやすい解説

苗 (なえ)

作物栽培や植林を行う場合に畑や林地に植えつける若い植物を苗といい,木本植物の苗をとくに苗木と呼んでいる。また,苗を育成することを育苗といい,育苗を行う場所を苗床(イネの場合は苗代)という。苗半作といわれるように,苗の良否は植えつけ後の生育や収量に大きな影響を与え,栽培の成果を左右するので,育苗中の管理には十分注意を払い,茎が適度に太く,節間が徒長せず,根がよく張った無病の苗を作らなければならない。苗の育成方法は作物によって異なり,種子から育てる場合(実生苗という)と接木や挿木によって繁殖,育成する場合(接木苗挿木苗という)がある。接木や挿木によって繁殖を行う作物では,繁殖に適した環境の下で増殖した個体(苗)を畑に移植するのが普通であるが,種子繁殖を行う作物では,苗床に種子をまき,苗を育てて畑に移植する移植栽培のほかに,畑に直接種子をまく直まき栽培を行うこともできる。近年では,移植の際に根が切断されたり,植えいたみが起こらないように多くの種類でポット苗を育てている。
執筆者:

実生苗が90%以上を占め,残りはほぼ挿木苗であるが,特別な用途には接木苗も使われ,また取木苗,伏条苗(樹木の根もとに近い枝を押し下げて土をかけて発根させた苗木)などもある。紙,ポリエチレン,ビニル,ピート,竹など各種の材料の容器で育てた苗木はポット苗または鉢付苗とよばれる。実生苗,挿木苗ともいわゆる床替えをすることが多いが,この操作を行ったものは床替苗とよび,植えつけのため林地に運ばれる苗木は山行苗または山出苗という。森林の中やその周辺に自然に発生した稚樹を苗木として使う場合には山引苗とよぶ。
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「苗」の意味・わかりやすい解説


なえ

作物の栽培に利用する比較的幼い植物体をいい、草本性植物については苗、木本性植物については苗木とよぶ。苗は種子を播(ま)いて育てる実生(みしょう)苗が一般であるが、株分(かぶわ)け苗、接木(つぎき)苗、挿木苗、取木苗などもある。またサツマイモの場合のように、種(たね)いもから芽生えた茎を切り取った、根のついていないものでも苗とよんでいる。

 苗は普通苗床で集約的に管理して育て、一定の大きさになってから本畑に定植する。種子が発芽した幼若期は外界の影響を受けやすいので、その時期を苗床で人工的に保護して育て、抵抗力がついてから畑に出すのが苗の目的である。ほかに、自然の作期より早いうちから苗を育て、露地が生育可能気温になったらただちに移植して生育と収穫を早める目的などもある。苗の素質は移植後の植物の生育や収量に影響を及ぼすため、昔から作物栽培では苗半作とよばれるほど、健苗の育成が重要視されている。よい苗(健苗)とは、根張りがよく、茎が太く、葉は淡くもなく濃すぎもせず、徒長しないで堅めに育ったもので、病虫害や傷害のないものである。

[星川清親]

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【育苗】より

…農林業においてまたは苗木を一定場所に集め,保護・育成することをいう。一般に発芽直後の植物は雨・風などの気象変動に弱く,病気・害虫などの被害も受けやすい。…

※「苗」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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