葛山城(読み)かつらやまじょう

日本の城がわかる事典 「葛山城」の解説

かつらやまじょう【葛山城】

長野県長野市にあった山城(やまじろ)。善光寺(同市)の北西約2kmにある葛山(標高822m、比高約110m)山頂に築かれていた城である。山頂の主曲輪(くるわ)を中心に北、東、西の尾根にわたって連郭式に曲輪を配した広大な山城であった。1555年(弘治1)の第二次川中島の合戦(犀川の戦い)、1557年(弘治3)の第三次川中島の合戦(上野原の戦い)ゆかりの城として知られる。もともとは飯縄山一帯を所領としていた滋野(しげの)氏一族の落合氏の居城で、長尾景虎(のちの上杉謙信)が同城を整備した後も、落合氏が城主をつとめていた。甲斐の武田晴信(武田信玄)は1553年(天文22)、葛尾城(埴科郡坂城町)の村上義清を攻めて越後の景虎のもとに逃れた。その後、義清は長尾氏の援軍を得て葛尾城を奪い返し、塩田城(上田市)に籠もって抵抗したが、同城も落城し、義清は再び越後に逃れた。村上氏の勢力を駆逐した晴信は、その後川中島(長野市)周辺の領主を知略により攻略して、越後(新潟県)と接する北信濃(同県北部)進出の足がかりを得た。これに危機感を抱いた景虎(謙信)は川中島のある善光寺平に出陣し、1555年(天文24)に第二次川中島の合戦(犀川の戦い)が起こる。この戦いで、川中島に進出した景虎は横山城(長野市)を本陣としたが、信玄は味方の善光寺別当・栗田鶴寿(寛久)が籠城する旭山城(長野市)に援軍を派遣する一方、犀川対岸の大塚(大堀館)に本陣を敷いた。これに対抗するため、景虎が同城とは裾花川をはさんだ対岸にある葛山城を整備して向城(むかいじろ)とした。これにより戦線は膠着し、今川義元を仲介者して両軍の間に和睦が成立。武田方の旭山城の破却が決まった。1557年(弘治3)2月、雪で上杉軍が出陣できない時期を見計らい、信玄は牧之島城(上水内郡信州新町)の重臣馬場信春に命じ、大軍で葛山城を急襲して落城させた。武田軍は水の手を断ち切り城に火をかけ、城主の落合備中守を含め城兵のほとんどが戦死した。この攻城戦で、城内の長尾勢は、水に乏しく米を水に見せかけて武田勢の目を欺いたという米山城伝説が残っている。その後、同年4月に景虎は川中島に出陣し、第三次川中島の合戦(上野原の戦い)が起こる。景虎は北信濃の武田方の諸城を落とし善光寺平の奪還を図り、上野原(長野市)で両軍は交戦したが、武田軍が決戦を避けたため飯山城(飯山市)に引き揚げた。このため、葛山城は引き続き武田方が支配し、以後、武田方の城として存続した。その後、降伏した葛山衆は信玄の配下として活躍したが、武田氏滅亡後は再び上杉景勝(謙信後継の越後の国主)の配下に置かれた。同城跡には堀切、竪堀、土塁などの遺構が現存している。山頂の本曲輪跡は見晴らしのよい小公園となっており、旭山城跡や大峰城跡のほか、長野の市街地のある善光寺平を一望できる。JR長野新幹線・信越本線・篠ノ井線、しなの鉄道長野駅から徒歩60分(登城口)。山頂までは、葛山南東尾根の麓にある武田方ゆかりの静松寺(じょうしょうじ)(同市茂菅)や葛木神社(同市鑢(たたら)地区)などからの登山道が整備されている。山頂までは、静松寺から徒歩約40分。

かずらやまじょう【葛山城】

静岡県裾野市にあった中世の山城(やまじろ)。駿東郡の有力国人領主・葛山氏の居城。愛宕山山頂に本丸・二の丸を配置し、東西に延びた尾根筋に出丸(東曲輪(くるわ)と西曲輪)を配した城郭である。城山の麓には平時の居館(葛山館)があり、葛山城はその詰めの城としての役割を果たしていた。城主の葛山氏は鎌倉時代には御家人で、室町時代には駿東一帯の在地領主として代々今川氏に仕えた。今川義元が桶狭間の戦いで織田信長により討ち取られたのちの1569年(永禄12)、城主の葛山氏元は義元の後を継いだ氏真から離反して、駿河進出をめざしていた武田信玄に臣従した。こののち、城の整備が行われ、本丸下の腰曲輪から放射状に延びた竪堀など、武田流の築城術の名残を残す城となった。その後、氏元の代で葛山氏は没落したが、信玄の六男信貞が葛山氏の名跡を引き継いで再興した。1582年(天正10)、織田信長が甲斐に侵攻し、武田勝頼が天目山で自刃して武田氏は滅亡したが、その際、城主の葛山信貞も甲斐の善光寺で自刃し葛山氏も滅亡した。城跡には2本の竪堀や土塁などの遺構が比較的良好な状態で残っている。麓の葛山館跡は鎌倉時代を起源とする単濠単郭の方形の居館(東西100m、南北100m)で、中世の典型的な豪族の館跡として高く評価されている。JR御殿場線裾野駅からバス、葛山下下車。城跡のある愛宕山山頂には、麓の仙年寺境内から遊歩道を使って登ることができる。

出典 講談社日本の城がわかる事典について 情報

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